電話の向こう側

 電話で人と話していると

 向こう側には

 本当はだれもいなくて

 魂のこだまが

 機転をきかせて

 会話らしきものを成立させて

 コミュニケーションの死をごまかしている

 そんな想像にかられてしまう


 もしかしたら

 電話の向こう側の相手も

 同じことを考えているのかもしれない

 そして真実は向こう側にあり

 こちら側のぼくこそが

 死をごまかしている魂のこだまで

 本当は

 だれもいないのかもしれない

 受話器を握る手も

 少し緊張して応対するこころも

 なにもかも


 電話で人と話していると

 そんな想像にかられてしまう

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