夜闇にだれかが窓の明りを

 胸の奥底がたぎっている

 夜

 記憶にさいなまれて

 いつもこめかみの辺りが痛い

 夜

 大切ななにかが砕けてしまうのを

 鼻歌まじりの笑みでやり過ごすしかなかった

 夜


 もうだれも

 訪れる者などいない

 もうだれも

 鍵を開ける者などいない


 いまは室内

 空の色はわからない

 きっとただただ

 暗いのだろう

 みなくてもわかった

 明日の夜も

 これから先も


 ぼくはいま

 明りのまえで

 この光を

 窓の外から目にするだれかを

 夜闇を散歩する気まぐれなだれかを

 信じようとして

 信じられず

 明りのまえで

 この光を理解できるのは自分だけなのかと

 それだけがひどく侘しい

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る