秋の楽器

 秋に侵されたわたしの身体が

 空洞になって風がこもる

 ファゴットみたいな音を立てる

 季節に侵されたわたしの身体は

 どうしようもないほどに秋の楽器

 かすれた音色で古楽に奉仕する

 わたしを通り抜ける初秋の室内楽

 わたしが期待する晩秋のレクイエム

 わたしに想像される憂愁の単旋律

 指揮者はいない

 聴衆もいない

 楽譜をめくる神だけに捧げる

 言葉と沈黙と感情の音楽

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