明るさを信ぜず

 なぜ暗い方ばかり見るのか

 明るさに顔をそむけなければ

 もっと楽しいはずなのに


 なるほどたしかに

 ぼくもそうは思うけど

 ぼくがもっとも明るかったころ

 ぼくは他人を踏みにじっていた

 明るいままに罵声を浴びせていた

 その事実を

 痛みとともに思い知らされて以来

 明るさへの不信感は拭いがたい


 “悪には悪を想像する力がない”

 酒好きの詩人のそんな一節

 “アカルサハホロビノスガタデアロウカ”

 情死した作家のそんな一文

 暗さのもといを堅固にするため

 そんな言葉を持ち出すほどに

 ぼくは明るさが信じられない

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