ありふれた神様

 ――あなたはだれ?

 ――だれだと思いますか。

 ――神様かな?

 ――残念ながら違いますね。

 ――じゃあ悪魔?

 ――惜しいけど、違います。

 ――だれだろう。

 ――他人ですよ。ありふれた他人。

 ――クソボケが。近寄るな。

 ――まあまあ、そう言わずに。きみは本当に、他人が心底嫌いなんですね。私はね、そんなきみに、魔法の薬を持ってきたのですよ。

 ――魔法の薬?

 ――そうです。見てください。これを飲めば、きみの世界から他人は消えます。もうきみを煩わせることはないし、悩ませることもない。きみにだれも触れることはない。きみは自由になれるのです。

 ――なんだ、やっぱり神様じゃないか。ずっと待ってたよ、あなたのことを。

 ――いますぐ飲みますか?

 ――もちろん。……うーん、味はいまいちだね。良薬口に苦し、ってところかな。

 ――…………。きみは、そんなにも他人を憎んでいるのに、どうしてそんなにも信じやすいのですか? それは、ただの毒薬でしかないのに……。

 ――わかってるよ、そんなことは。でも、死をもたらしてくれるのなら、それがだれであっても、神様だよ。あなたは自分が神様であることに、気がついていなかっただけだよ。ありがとう、神様。さようなら、神様。くたばれ、神様。

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