麻痺

 陰気きわまりない高校生だったころに

 ネットを検索していて

 紛争地帯の凄惨な映像に出くわした

 集団に囲まれてナタのようなもので切りつけられている男性や

 おびただしく横たわっている損壊の激しい子どもの死体などが

 モザイクもぼかしもなく映っていた

 ひととおり見ていると

 精神の一部が壊死していくような感覚があったが

 何日か間を置いてから

 もういちど見てみることにした

 あいかわらず神経をすり減らされるけど

 すでにして感覚は麻痺していた

 憑かれたようにその後も繰り返し見たが

 だんだんなにも感じなくなった

 でもそれはあくまで表面で

 こころの奥底では

 どうやらまずい事態が進行していたらしく

 眠ったときに

 すさまじく不気味な悪夢を見た

 内容はもはや語れないし

 感触のみしか残っていないけれど

 あの悪夢を境にして

 感覚の麻痺はもう

 取り返しがつかなくなったような気がする

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