頬をつねる

 フィクションの中で

 現実なのか夢なのか確かめるために

 自分で自分の頬をつねる

 という登場人物を時おり見かけるが

 それでは足りないんじゃないかといつも思う

 この世界が現実なのか夢なのか確かめるためには

 死んでみる

 ことしか

 方法はないのではないか

 でも自分の頬をつねる登場人物は

 なかなか死んでまではくれないし

 たいていの場合

 自分がフィクションという

 夢の住人であることにも気づいてくれない

 死んでさえも気づかないのかもしれない


 ぼくがいま住まうこの世界は

 現実なのか夢なのか

 どちらにせよ意味はないけれど

 それを確かめるためだけにでも

 死んでみるには充分な理由

 なのだと確信は深まるばかり

 だけど心残りと度胸のなさで

 今日のところは

 頬をつねるだけにとどめてしまう

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