7.完全体
「ガガァァッ!!」
怒りに吼える
「ウグ、ガァ」
「ガァァァァァ!!」
激しい金属音。
「レイン!!」
「っ!!」
「速いっ!」
「こいつ、速くなってないか……?」
「グゥ、ウジュルルグゥ、グルゥ……。」
距離を取った
「うあぁぁっ!!」
レインが壁まで吹き飛ばされ、膝を付いていた。
「ウガラァァグァァ!!」
涎をまき散らしながら、
更に右からは
俺は残った左手に
「!?」
俺は
「ロ、ロディ!?」
「ガヴァルガアアァルグワァァァ!!」
共同溝の壁が切り刻まれ、天井が崩落を始める。
「完全に暴走している!!」
良く見ると、アルバートのマグナがずっと天井に嵌ったままだ。あいつずっとあの状態だったのか?
「ロディ、モウ、ヤメナサイ!」
「ヤメ、ヤメテ、ロディ!!」
「ガアアアアァアアアアアア!!」
── 眠らせておくか、命を絶つしかない ──
いつかの言葉が脳裏をよぎる。それと共に、自分の思考が急激に冷え込んでいくのを感じた。
「
お、俺は……?
自身が一切の躊躇なく
「ロ、ロディ!!」
「ね、ぇ、ちゃん……、ご、めん、」
「そんなこと気にしないでいいから! しっかりして! すぐに何とかするから!!」
外殻が剥がれ、素顔が覗く
「ロディ!! ロディ!! だめよ!! ああぁぁぁ……!!」
「コースケ……。」
レインが俺の左手を包むように握る。レインもかなり傷だらけで、黒いドレスアーマーも汚れが目立つ。
「ぐはっ」
マグナのコックピットからアルバートが落下してくる。身動きできないため、ついに生身で地下へ入り込んできたらしい。
「エリーゼ様、ご無事ですか!?」
「ええ、私は無事よ……。」
背後から、エリーゼの声がした。
「また……、任せちゃったわね……。ごめんなさい。」
エリーゼが俺の胸に手を当て、うつむきながら謝罪の言葉を紡ぐ。
「……。」
俺は声をかけようとして口を開き、だが、何も言えなかった。あの時の俺は……、俺なのか?
「わかってた……、」
そんな俺の逡巡を遮るように、背後からの声。
俺は再びフィーデに目を向ける。相変わらず弟の亡骸を前に座り込んだままだが、体は起こしていた。
「……、ほんとは、わかってたよ、もう助からない、って。」
フィーデは途切れ途切れに言葉を続ける。
「こう……、するしかないって。」
フィーデが立ち上がる。体からはうっすらと蒸気が揺らめく。
「手を下せない、私の、代わりに、やってくれたんだよね……。」
全身の外殻がビキビキと音を立て、変性を遂げ始める。
俺はレインとエリーゼを後ろに下げ、左手のフィールド発生器を交換する。
「でも……、それでも……。」
先ほどの戦闘での傷も全て塞がっていく。頭部が外殻に覆われ、その表面はこれまでに無いほどにうねる。
「ウガァァァァァァァァァァァァァ!!」
それは怒りの咆哮か、悲しみの嘆きか、叫びを放つ口角は耳下まで裂け、恐ろしい刃のような歯が覗く。
フィーデの姿が消える。
「ぐあっ!」
右肩を引かれ、背後に吹き飛ぶ。見れば、禍々しい爪が肩に突き刺さり、傷口をもたれてそのまま引きずられている。
「
再びのグレースケール、右肩に刺さる爪を強引に抜き去ると、俺は地に落下した。
「コロオォォォォォォォォスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」
フィーデは共同溝の床壁天井の全てを足場にして飛び回る。
フィーデが突撃してくる。ギリギリではじく。だが、既に姿が無い。背後からの衝撃、背中を切りつけられた──、
既に右から接近している。半壊の右腕で防ぐ。右の義手は完全に破壊され、肘から先がなくなってしまった。
上下左右前後、あらゆる場所からの攻撃、
「攻撃予測!!」
視界に複数表示される予測攻撃軌道。その中からほぼ勘で攻撃を防ぐ。防戦一方ではだめだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「キシャァァァァァァァァ!!!」
激しい衝突音と衝撃が共同溝を揺るがした。
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