第461話柳生事務所の会議に二人の中国人が参加
永田町の柳生事務所での会議に、二人の中国人が参加した。
二人とも、横浜中華街から、華音とも親しい周氏と陳氏だった。
周氏
「華音君にも恩返しをしたくてね、まあ、ささやかではあるけれど」
陳氏
「私の香港の親戚に工作を持ちかけたんです」
柳生隆は、苦笑い。
「それで、少々期限切れの食材を?」
陳氏
「いや、表面上は大丈夫、ただ前のシールを剥がして、貼り替えただけ」
周氏
「まあ、ちょっとした腹痛と下痢程度が続くだけ」
「それも潜伏期間がありましてね、ちょうど晴海ふ頭に着く頃に最大の効果が出る、だから食べた当初はわからない」
潮崎師匠も含み笑い。
「全く性格が悪いなあ」
「あいつらもロードス島からの長い船旅で、新鮮なものが食べたい」
「それに細工するなど、中華は怖いな」
陳氏は笑って首を横に振る。
「いや、あんな非道の連中に、まともな飯なんて食わせません」
周氏も頷く。
「人を倒すのは格闘だけでなくて、いろんなテクニックをがあるのです」
柳生隆が話題を変えた。
「例の横須賀沖で積み込む武器弾薬の手配は?」
元自衛官の橋本スタッフが答えた。
「横須賀で積み込む手はずの武器弾薬については、複数のメール資料から分析判明、捕縛した自衛官からも確認しています」
「それから、全て最新鋭武器のダミーに交換済みです」
「武器としての効力はありませんが、相当精巧なダミーですので、まずはわかりません」
「ただ、生物兵器と化学兵器、核の小型爆弾は、彼らの船にあるので、それが不安です」
周氏が、柳生隆の顔を見た。
「少し、香港沖の海が荒れている」
「となると、明日は出航できない」
「もう一度、食料を積み込む際に、細工をしよう」
陳氏が説明をする。
「熱々の中華饅頭を持ち込む、それに強力な睡眠薬を仕込む」
「眠りこけた際に、あいつらの武器弾薬を盗む」
潮崎師匠は、顔をしかめる。
「そう、うまく話が進むか?」
「あいつらも馬鹿ではない」
「そこの警備は厳しいはず」
「下手に気づかれれば、殺されるよ」
「陳さんが、そこまで言うんだから、中華饅頭を持ち込む人もカンフーのマスタークラスとは思うけどね」
周氏が潮崎師匠の顔を見た。
「食料品の売り込みで船内に入った手下の分析では、例の4人の中で、慎重派はジャンだけのようです」
「ボルコフは自らを過信しているのか、細かなことには無頓着」
「アランは巨漢なわりに神経が細かい、しかしボルコフとNO2争いをしているので豪胆を装う、だから行動にどこか、スキが出る」
「カマルが難しいけれど、条件次第で簡単にジャンを裏切る」
「カマルを分離させる策、あるいは買収も考えています」
潮崎師匠も、その分析と対策には納得できるらしい、異論を挟まない。
様々な議論が進む中、陳氏が柳生霧冬に尋ねた。
「華音君は、VIPの警護とか」
「本当にそんなことを?」
柳生霧冬は表情を厳しくした。
「ああ、本気で戦えば、全盛期の俺より強い」
「あくまでも最終兵器、なるべく戦わせたくはないが・・・」
「俺は4人組の本気より、華音の本気のほうが怖い」
これには潮崎師匠も深く頷いている。
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