第415話藤原美里のデートを却下する祖母 そして・・・
さて、藤原美里が眠れなくなるほど懇願した、「華音との二人きりのデート」は、実現が不可能となってしまった。
その原因は、藤原美里の祖母が猛反対、却下したことによる。
「そんな、どこの馬の骨ともわからない男と、由緒正しい藤原家の娘が二人きりで逢うなんて、言語道断」
「それを高校生の男子?しかも下級生?ありえません」
「お付き合いをするとしても、少なくとも立派な公職につき、年収も家柄も良くないと、この家の恥になります」
藤原美里の祖母は、一度言い出すと、聞く耳を持たない頑迷なタイプ。
美里が、「華音君に目を直してもらった、背筋の矯正をしてもらった」と恩義を言っても、「このたわけもの、未婚の娘が男に身体を触らせるなど、実にふしだら極まりない」と逆に激怒されてしまった。
それでも美里が、「華音君のお屋敷は立派で、いろんな政治家が出入りしています」と言うけれど、祖母は激怒のあまり、聞く耳を持たなかった。
また、何とか祖母をとりなしてくれる両親は、あいにく海外出張中で家にいない。
それもあって、美里は泣く泣く、華音に「ごめんなさい、祖母が反対して無理です」の連絡を入れる。
その連絡を受けた華音は、あっさりとした返事。
「そうですか、それは残念」
「おばあ様には、申し訳ございませんとお伝えください」
「旧前田侯爵家とも、祖父さんのお付き合いがあったのでご一緒にと思って連絡してあったのですが」
「わかりました、また別の人と行きます」
藤原美里は、その「あっさりさ」に、落胆。
「う・・・誰かな、瞳ちゃんかな、エレーナかな、お姉さまたちかな」
と嫉妬の思いが強いけれど、自分で誘って自分でキャンセルなので、何も言えない。
「本当に、ごめんなさい」と電話を終えるしかなかったのである。
さて、藤原美里の両親が海外出張から戻って来たのは、本来のデート日の前日。
普段なら笑顔で自分たちを迎える美里が、ひどく落胆しているのを見て、まず母が驚いた。
「ねえ、美里、元気がないけれど?」
美里は、泣く泣く母に説明。
「華音君と二人きりのデートを申し込んだんだけれど、おばあ様が反対されて、こちらからキャンセルすることに」
母は驚いた。
「え?その理由は?」
美里は、祖母が反対した理由を「かくかくしかじか」と、母に説明をする。
すると母は、顔が真っ青。
そして美里の父にそれを言うと、父も表情が変わり、両親がようやく祖母に「とりなし」をすることになった。
「母さん、しっかり言っていなかったけれど、華音君は実はここの家なんて比較にならないほどの豪邸住まい」
「今は杉並の母方のお祖父さんのお屋敷」
「日本でもトップクラスの貿易会社を興した人、歴代の首相や財界のトップと関係が深い、今でも政財界に相当な力を持つ家」
「父方の家系もすごいよ、奈良に地盤を持っていて日本の寺社関係では最高クラス」
「美里には、しっかり言っていなかったけれど、いずれはお見合いも考えていたのに」
その「とりなし」を受けて、今度は祖母の顔が変わった。
「え?・・・杉並の貿易会社の超豪邸?」
「私・・・その超豪邸にお邪魔したことありますよ」
「あの人のお孫さん?」
「私・・・貿易会社のあの人に大変お世話になりましたもの・・・」
「それを・・・どこの馬の骨とか・・・」
「取返しのつかないことを・・・」
美里の母が泣き出した。
「お母様、あまりなお言葉です」
「美里は・・・どうしたらいいのですか?」
「恩人の華音君に、こちらからデートをお願いしておきながら、お断りなんて不誠実なことをしてしまって」
かくして、美里の家全体は、重苦しい雰囲気に包まれている。
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