第414話藤原美里の不安と安心、さらなるチャレンジ。
華音は何事においても、ほぼ順調な学生生活を送っているけれど、藤原美里は全く落ち着かない。
何しろ、華音と約束した「駒場の日本近代文学館でのデート」の、「最終連絡」にも戸惑っているのだから。
「華音君の周りには、いろいろ素敵な女性がいるし」
「シルビアさんと春香さんは、従姉でよかった」
「でも、瞳ちゃんとエレーナさんは、強敵だ」
「それに、文学研究会と古代史研究会の華音君への群がり方は危険極まりない」
「もし、最終連絡をして」
「華音君が、他の人も誘っていいですか?って聞いてきたら・・・」
「うーん・・・断りづらい」
「でも、大勢ガヤガヤだと、独占できない」
「ますます、モヤモヤがひどくなる」
しかし、藤原美里は、「モヤモヤ」も限界だった。
震える指で、華音のアドレスをタップした。
華音もすぐに電話に出た。
「はい、華音です、お久しぶりです」
「この間は拙い万葉集を聞きにいらして、ありがとうございました」
と、実に明るく甘い声。
その華音の声に、藤原美里の心はパッと花開く。
「いえ、素晴らしかった、華音君!」
「もう聞いていて胸がドキドキしていいなあって」
「ありがとう、素晴らしい世界を教えてくれて」
華音は、また甘い声。
「そんなにほめられると恥ずかしいです」
「まだまだ、言い足りなかったことが多くて」
「藤原さんは、ほめ上手ですね」
藤原美里は、もううれしくて仕方がない。
「そんなことないよ、華音君、本音だもの」
この時点で、藤原美里の顔は真っ赤。
そして、ようやく本題に入る。
「あのね、この間のお話、来週土曜日の駒場の近代文学館なんだけど」
とまで言って、また少し緊張。
お邪魔虫女が入るのが実に心配。
華音は、実にスムーズな答え。
「はい、了解しています」
「藤原さんと二人で行きます」
「待ち合わせは駒場東大前でどうですか?」
藤原美里は、そのスムーズな答えに、戸惑う。
「え・・・いいの?うれしいけど」
「お姉さまたちとか、他の人は?」
言い終えて、「余分なことを言ったかな」と、また不安。
華音は、やさしい声。
「ご心配いりません」
「僕と藤原さんの約束なので」
「それに、ゾロゾロ歩く場所でもなくて」
「では、来週の土曜日、楽しみにしています」
と、二人の電話は終わった。
「うーーー・・・緊張した」
藤原美里は、ようやく連絡が終わり、ベッドに横になる。
そして、その顔は幸せに満ちている。
「なんと・・・華音君を独占できる?」
「強敵女たちを、差し置いて」
「どんな服で行こうかなあ、少しチャレンジしてみようかな」
「一つ上のお姉さんとして、華音君をドキッとさせる服ないかなあ」
「少々、ミニスカートにして」
「華音君の赤い顔が見たいなあ」
「私だって、そういう魅力があるって、見せつけたい」
そんな思いばかりとなって、藤原美里は、結局、夜更かしになっている。
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