第358話華音VS都内選抜空手選手
空手部練習場で、華音と都内選抜の空手選手が一人ずつ対決することになった。
それを見守るのは、華音の学園側では吉村学園長、空手部監督松井、空手部の面々と、都内選抜監督の前田、出番を待つ都内選抜空手選手、文科省の藤村となっている。
尚、華音の師匠潮崎と柳生清は、全く興味がないので、学園長室にいる。
吉村学園長が文科省の藤村に声をかけた。
「華音君がどうするのか、手加減するほうが難しいかも」
藤村は、官僚としての立場もあるので苦言。
「そもそも空手部でもないのに、相手にする必要はありません」
「それに、一人で全員を相手にするとは、危険極まりない」
吉村学園長が笑った。
「華音君は、同時に全員でもって、言っていたの」
「それを譲歩して、一人ずつになったの」
藤村は呆れたような顔。
「うーん・・・」と唸るのみになっている。
審判役は、学園空手部主将の剛、その「はじめ!」との声がかかり、「対決」がはじまった。
都内選抜の空手選手の一番手が、軽やかにステップを踏むけれど、華音は全く動かない。
全く自然体で、ステップを踏む相手選手を見ているだけ。
その華音に焦れたのか、相手選手が「エイッ!」と発声、華音に向かって正拳突きを繰り出した。
次の瞬間だった。
「ギャア!」
空手部練習場全体に響いたのは、都内選抜の空手選手の悲鳴。
吉村学園長が、にっこり。
「あら、怪我はさせていないよね、華音君、さすが、いとも簡単に」
文科省藤村は、あ然。
「華音君の拳が、相手選手のあご先・・・数センチ先にピタリ」
「あ・・・そのまま、腰を抜かしたのか、華音君が助け起こしている」
空手部監督松井は、震えた。
「おい・・・華音は、いつ放った?」
「当たれば死ぬか、一生不具者のポイント」
都内選抜監督の前田も、膝がガクガクとしている。
「後の先って・・・正拳突きが向かって来るのを見て、そのスピードよりも、かなり速くカウンターであごに向けて・・・しかも数センチ手前で止める・・・」
「打つ気なら・・・死んでいる・・・」
都内選抜の二番手の選手が華音の前に立った。
かなり長身な選手。
その選手に対峙しても、華音は動かない。
「ヤアッ!」
長身の選手が、華音の頭部に向けて、ハイキックを放った。
しかし、結果は一緒だった。
「ギャア!」との叫び声と同時に、華音の正拳が、長身の選手のあご先数センチで止まっている。
長身の選手も、足が震えて立ち上がれない。
華音が助け起こして、都内選抜の空手選手が引き取っていく。
その後、全員の選手が華音と対決したけれど、全く同じ結末となった。
空手部監督松井の顔が蒼い。
「突こうが蹴ろうが、華音がすごいスピードで、懐に入ってしまって、カウンターの正拳突き」
都内選抜監督前田は、首を横に振った。
「速すぎる・・・華音・・・全く動きが見えない」
そして、都内選抜の選手の顔を見る。
「こっちの動きに合わせて、それよりも数倍速いスピードで動いて来る」
「こっちは、全部先を読まれて、当たる気がしない」
「しかも、正拳突きを、同じ場所で止められているんだから」
「マジで、死ぬかと思った」
「拳が・・・顔より大きく迫って来たけど・・・」
「まだ震えが止まらない」
「倒そうと思っていない、俺らを制御しているだけ?そう思うけれど・・・ちょっとでもタイミングがずれたら俺ら死んでる・・・というか華音に遊ばれた?」
「こっちはガクガクゼイゼイ・・・華音・・・呼吸が乱れていないし」
さて、華音は高校生の選手全員との対戦が終わったので、つまらないような顔。
そして今度は、都内選抜の前田監督を見ている。
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