第334話渋谷駅前スクランブルの乱闘(4)
ヤンキー集団の乱闘を鎮めた華音たちの一行は、群衆から大きな拍手を浴びながら、怪我人を救護所に運ぶ。
また、群衆の中から、看護師が何人か出てきて、手伝いを申し出る。
「見ているだけでは気がおさまらない」
「本当に、傍観してしまってごめんね」
「怖かったし、トバッチリも受けたくなくて」
華音は、やさしく笑い、一人一人に頭を下げる。
「いえいえ、ご協力ありがとうございます」
「まずは、この人たちの手当てを優先しましょう」
救護所に運ばれる怪我人たちからも華音たちに、感謝の言葉がある。
「本当にご迷惑をおかけして」
「危ないところを助けてもらって」
華音は、首を横に振る。
「いえ、当たり前のことです」
「痛む人は助けようと思うので」
「今は、治療を優先しましょう」
華音たちの一行は、救護所に到着した。
それぞれを、救護用のベッドに寝かしつけると、救護所の医師と看護師から言葉がかけられる。
「ありがとう、どうなるかわからなかった」
「あのまま、乱闘がひどくなれば怪我人ももっと多く」
華音が少し頭を下げると、さっそく救護所の医師と看護師たちによる治療が始まった。
ようやく落ちついた顔の華音に松田明美。
「華音ちゃん、ありがとう、助かった」
「華音ちゃんとエレーナがいなかったら、被害は拡大した」
華音は、少し難しい顔。
「でも、さっき、警護の警察官に叱られてしまって」
「余計なことをするなとか、謝らないといけないのかな」
「でも、とても見ているだけなんて出来なくて」
「警護の人には、申し訳なかった」
華音が、少し不安な顔をしていると、華音を叱った警察官が歩いて来る。
ただ、華音を叱った時とは、全く違う表情、蒼ざめている。
また、誰なのか年配の警察官と一緒に歩いている。
松田明美が手をあげた。
そして大声。
「ここにいます!」
「怪我人も全部運んでもらいました!」
その声に応じて、華音を叱った警察官と年配の警察官が救護所に入って来た。
その警察官二人を見て、華音がまず頭を深く下げた。
「本当に申し訳ありません、勝手なことをしてしまいまして」
「こちらから謝罪に行かなければならないのに、わざわざ出向いていただいて」
「またご迷惑をかけてしまいました」
その華音に、年配の警察官から声がかけられた。
「いえいえ、顔をあげてください」
「謝らなければならないのは、当方です」
「やるべき警護を行わず見ているだけ」
「その上、善意のあなたたちに、警察官としてあるまじき暴言」
「華音君たちがいなかったら、どうなったことか」
華音は、ようやく顔を上げた。
その華音に、叱った警察官が深く頭を下げた。
「本当に申し訳ない、ひどいことを言ってしまって」
少し落ち着いた華音に年配の警察官が尋ねた。。
「あの乱闘者たちを止めた技はすごいけれど・・・?」
華音は恥ずかしそうな顔。
「はい、裏柳生に伝わる合気の一種、僕のは霧冬先生直伝です」
「あの・・・柳生霧冬先生?すると君が華音君?そうだったんだ・・・」
年配の警察官は、少し震え、その後、笑い出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます