第333話渋谷駅前スクランブルの乱闘(3)

華音は、暴行を受けていた小学生の前に立つと同時に、抱きかかえた。

おそらく5年生か6年生ぐらいの女子。

額から出血、頬も腫れて、衣服も破かれているので、相当な暴行にあったものと思われる。


その華音に、暴行を続けていた集団から、罵声が浴びせられる。


「おいおい!何だ!このガキ!」

「邪魔しないでよ!」

「関係ねえだろ!」

「お前も痛めつけられたいのか!」


華音は、そんな罵声を聞くこともない。

そのまま、女の子を抱きかかえたまま、集団乱闘の場をスッと抜け出してしまう。


その華音に今西圭子たちが追いついた。

「さっきの蹴られていた人は、明美が救出して警護所に」

シルビア

「その女の子は、私たちが何とかする」

春香

「華音は、他の倒れている人を救出して!」

エレーナは、厳しい顔。

「私は、華音君を手伝う」


かくして、華音とエレーナは救出、今西圭子とシルビア、春香は治癒の役割分担が決定、それぞれに動き出す。


さて、その華音とエレーナの救出の動きは、実に素早い。

倒れている人を見つけると、華音が暴行を続けるヤンキー集団を手だけで制してしまう。

小刀は華音の手の動きでカランと地面に転がり、チェーンは振ろうとした手に巻き付いてしまう。

蹴りをいれようとした脚は、バランスを失い、そのまま後方にひっくり返ってしまう。

そして、そのスキに、グレコローマンの選手でもあるエレーナが倒れている人を抱きかかえてしまう。


華音

「これは、合気の技だよ、相手の目から動きを読んで、相手より先に動いて手をかざして狂わせる」

エレーナ

「うん、さすが!みんなキョトンとして、何も出来なくなっている」


その華音とエレーナの動きに、面白半分にヤンキー集団の乱闘を見ていただけの群衆が注目し始めた。


「ねえ、あの高校生の男の子と、金髪の美少女がすごいよ!」

「ヤンキー集団同士の乱闘に、わけもなく割って入って倒れた人を救出しているし」

「ヤンキーたちは、文句を言うけれど、あの高校生男子と金髪美少女の動きが速すぎて」

「いや、速いというより、手玉に取られている感じ」


また、見ているだけの自分たちにも、恥ずかしさを感じたようだ。


「ねえ、ここでじっとしているだけ?」

「怖いから遠巻きにしていたけれど」

「つい面白がってしまった、怪我人が出ているのに」


そして群衆の中から、乱闘を続けるヤンキー集団に声があがり始めた。


「おい!やめろよ!お前ら!」

「祭りを邪魔するな!」

「お前ら、恥ずかしくないのか!」

「邪魔するんだったら、帰りなよ!」


華音とエレーナの動きに翻弄され、取り巻く群衆にも文句を言われだしたヤンキー集団は、乱闘を続けることは出来なかった。

そして、群衆が見守る中、松田明美が率いてきた警察官たちによって、捕縛、連行されることになったのである。



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