第320話華音たちは奈良旅行になるらしい

華音たちは、お昼はホテルのレストランで取り、午後には瞳を送り届けながら、杉並の屋敷に戻った。


華音は立花管理人にお礼と報告をする。

「立花さん、ご手配、ありがとうございました」

「スムーズに藤原美里さんと面談することもできまして、貿易会社の支店長とのお話も有意義でした」

「それから周さんのお店ではお話、太極拳の陳さんとも懇意になり、御馳走までいただきました」


立花管理人は笑顔。

「はい、全てご歓談なされたお方から、お礼の電話がございました」

「特に藤原美里様は、相当感激なされておりまして、こちらにお礼に来たいようです」

「それから、周様と陳様は、ここのお屋敷での食事も希望されております」


華音は、素直。

「はい、出向いていただければ、お相手をします」

「これからのこともありますし」

そこまでは、横浜関連の事後報告などであったけれど、立花管理人からも連絡があるようだ。


立花管理人は、やや苦笑して華音に頭を下げ、話しだす。

「華音様、奈良のお母様が、相当心配なされております」

「一度、お電話なりをされていただけないでしょうか」

「・・・というよりは、顔を見たいそうなので、できれば一度、お戻りを」


華音が、答えに少し困っていると、お姉さまたちが騒ぎ出した。


松田明美

「ねえ、まだ電話してないの?」

今西圭子

「ほんと、マジに親不孝者やなあ」

シルビア

「呆れるよね、仏罰が当たる」

春香

「華音を縛っても電話させよう」

エレーナは、華音を見ているだけ。

内心は、「私も奈良に一度行きたいなあ、大仏さんと鹿さんを見たい」となっている。


華音は、考え出した。

「戻るなら、一人でいいかなあ、他の人はいいや」

「ようやく気楽になる」

「あっちの学園の友達にも会うかなあ」

「霧冬先生とも話をしたいなあ」


華音の結論は、早かった。

「立花さん、僕は連休に一度戻ります」

「一泊二日になります」

「僕から、母に連絡します」


この時点では、華音は単独行動の予定で、気分は実に晴れ晴れとしている。


しかし、華音の結論を聞いた立花管理人は、また苦笑。

何しろ、華音を見つめるお姉さまたちの厳しい視線を把握している。


「あの・・・お一人では難しいかと・・・」

「それと・・・雨宮好子さんは、華音様のお母様とも大変仲が良く」

「もちろん、元はわが社の社員でもあったのですが」

「お母様は、好子さんの顔も見たくて、瞳さんの顔も見たいようで」

「もちろん、お祖父さまがお世話になったエレーナさんの顔も当然」


華音がまだ意味がつかめないので、首を傾げていると、お姉さまたちが騒ぎ出す。

シルビア。

「全員で奈良旅行する」

春香は華音のお尻を蹴飛ばした。

「帰りに京の西陣にも寄る」

松田明美

「私も里帰りやな、道案内は任せて、美味しいお店も」

今西圭子

「うーん・・・実家の酒蔵の様子も見たいなあ」


うろたえるばかりの華音のスマホには、瞳からのコールが入っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る