第307話華音たちの中華街散歩

華音たちの一行は、中華街に入った。

特にルーマニア出身のエレーナは、中華街独特の雰囲気にハイテンション。


「へーー!すっごい!赤と黄色と・・・超派手」

「美味しい匂いばかり!」

「甘栗美味しい!」

「へーーー!小籠包って何?」

「肉饅食べたい!」


つい先ほど、超名店のフランス料理を堪能したばかりとは思えないほどの、食欲を見せる。


負けてはいないのが、雨宮瞳。


「フカヒレ饅頭も好き、タピオカも好き」

「もーーー!こんな通りを歩くと、歩くだけでおなかが減る」

「月餅もいろんな種類があって、美味しそう」

「買って帰ろうよ、華音君」


シルビアは、エレーナと雨宮瞳の心理分析をする。

「結局、藤原美里の監視で、食べたけれど食べた気がしなかったと」

春香も同感。

「だって、華音と藤原美里が何か話をするたびに、ナイフとフォークが止まるんだもの、あの二人」


今西圭子は、少し考えた。

「どこかで、軽めの飲茶と中華菓子でも食べさせる?」

松田明美は、バッグからタブレットを取り出し、探し始める。

「中国茶専門店とかで、落ち着ける店はないかなあ」


すると、おそらく遠巻きに警護していた井岡スタッフから、松田明美に連絡。

「50歩ほど歩いた先に、老舗の中華料理店があります」

「そこの最上階の特別室を予約しました」

「メニューは、その場でご覧ください」


その井岡スタッフからの連絡を華音に伝えると、華音はうれしそうな顔。

「うん、あの店だよね、小さな頃、東京のお祖父さんと何度も来たよ」

「周さんのお店、懐かしいなあ」


今西圭子は、納得する。

「そうか、お祖父さんの貿易会社の横浜支店があるし、華音は横浜に一緒に何度も来ているんだね」

松田明美は、「周」の名前を聞き、驚く。

「かつては中華の大名人と言われたよね、あの周さんかなあ」

今西圭子

「うん、テレビで見たことある」

松田明美

「そうなると、安心できるかなあ」


さて、そんなことを言っていると、さすがに50歩の距離。

店に到着してしまった。

華音は、受付の店員に小声で何かを頼むと、すぐにエレベーターに誘導、一行は最上階にのぼる。


エレベーターのドアが開くと同時に、テレビでもおなじみの「周さん」が、満面の笑みで、出迎える。


「おやおや、華音君!」

「大きくなったねえ!」

「いや、懐かしい!うれしいよ、ほんと」

「それから、こんなに、お美しいお嬢様たちを引き連れて」

「お祖父さんも、女性にはモテたけれど、それを凌ぐねえ」


周氏は、とにかく「大人」の雰囲気。

それを見ている華音たちは、どんどん気持がほぐれていく。


華音は、恥ずかしそうな顔。

「横浜に来て、周さんの顔を見ないわけにはいきません」

「ずっと逢いたくてたまりませんでした」


その華音を、周氏は、しっかりと抱きしめている。

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