第300話「七五三美少年」華音は、サロンバスで横浜へ。

華音と、もう一人の高校生親善大使藤原美里の初顔合わせの日となった。

華音は、紺のジャケットスーツとチェックのネクタイなどで、完全にお坊ちゃま風に変身。

髪も、ふわっとした感じで、なかなか美少年風でもある。


お姉さまたちは、その華音を見て、大興奮。

シルビア

「まるで七五三、でも可愛い」

春香

「そのまま千歳飴持たせよう」

今西圭子

「ふむ、柄になるなあ、写真撮りたい」

松田明美

「年甲斐もない、でも、うちが先に撮る」

エレーナ

「華音ちゃんは、脱いでも惚れるけれど、着ても惚れる」


立花管理人が気を使ってお屋敷に連れて来た雨宮瞳も目をパチクリ。

「へーーー・・・ファッション雑誌の表紙になれる・・・こんな魅力があったのか・・・」


しかし、当の華音は、実にどうでもいいという感じ。

「服とか容姿で決まることではない」

「僕は人形ではないしさ」


そんな状態で、出発前に大騒ぎになっていると立花管理人。

「華音様、横浜では、当社のホテルを予約いたしましたので、ご宿泊をお願いします」

「貿易会社の横浜支店長が、夜は是非、一緒にお食事をと申しております」


華音は、それにはしっかり反応する。

「ああ、そうですね、ありがたいことです」

「僕には、そっちの仕事のほうが大切」

「お願いしたいことも、実はありまして」


そして華音は、極めて真面目な顔になった。

「その親善大使の話が済んだら、長谷の旅館にお礼に行きたいのですが」

「お世話になっただけで、全くお礼が住んでいない」

「大仏様もそうですし、長谷寺の観音様にも、ご挨拶が出来ていないので」


立花管理人は、満足そうな顔。

「了解いたしました」

「既に、いつでもお礼に行けるように、準備は整っております」

「明日は江の島にでも出向かれたらどうですか?」


華音が立花管理人とそんな話をしていると、運転手が迎えに来た。

立花管理人とお屋敷の従業員全員に見送られて、サロンバスにて横浜に出発となった。


松田明美が、その時点で官房長官に連絡をする。

「ただいま、お屋敷を出発いたしました」


官房長官は、少し声が高い。

「はい、お待ちしております」

「藤原美里さんも、本当に楽しみにしている御様子」

「レストランでも、シェフが実に丁寧に仕込みを始めました」

「何でも、先々代には、相当お世話になったとか」

「華音君の両方のお祖父さんも、何度も一緒に来店されたとか」


さて、華音は、シルビアと春香に、ガッチリと腕を組まれている。

何しろ、エレーナと雨宮瞳が、嫉妬するほど、その密着が強い。


今西圭子が、シルビアと春香の思いを代弁する。

「つまりな、この間、一人で華音ちゃんを出かけさせて、華音ちゃんは死にかけたやろ?」

「自分たちの責任を痛感しとるんや、だから、容易なことでは離さん」


松田明美は、華音が可哀そうになった。

「いくら何でも、あれじゃあ、女の子のサンドイッチや」

「華音は、実はメチャ嫌がっとる、横浜に着く前に疲れる」


そんないろんな思いを乗せて、サロンバスは横浜に向かって走っていく。

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