第291話野球部原島の激高はおさまらない。
多勢に無勢、ようやく不利を把握した野球部原島の取り巻きが、原島にご注進。
「原島さん、ここは引いたほうがいいのでは?」
「下手にこのまま暴行をしかけたりすると、それが問題となって秋の大会も辞退を・・・」
「高野連に通報とか報告とか・・・」
しかし、野球部の花形、学園のスターと自任する原島は、そんなご注進は聞かない。
何より冷静に正論を述べ、多くの生徒に囲まれている華音が気に入らなくて仕方がない。
結局、同じようなことを、わめき散らす。
「・・・るせえ・・・」
「田舎者の分際で・・・わかったようなことを抜かしやがって・・・」
「いいか?俺は三年生、しかも野球部だぞ!」
「お前は、一年生で、ついこの間転校してきたばかりの田舎者だ!」
「しかも男のくせに、文学研究会?」
「・・・ふざけんじゃねえ!」
「おい!馬鹿華音!」
「先輩の命令だ!」
「学園の許可なんて、どうでもいい!」
「お前が花壇作りをしたから、こうなった!」
「だから、お前が責任を持って、全部つぶせ!」
「終わったら、土下座だ!」
その二回目の土下座発言で、華音を囲む生徒たちの表情も視線も、実に厳しくなる。
しかし、原島は、それが気いらないのか、更にエスカレートしてしまう。
「ああ、華音と一緒につるんでいる奴らも、同罪だ!」
「お前らも、土下座しろ!」
「いいか!お前ら全員!」
「この野球部に逆らったんだ!」
同じような暴言が続く中、華音は途中から何も聞いていない。
長谷川直美が華音に耳打ち。
「全部録画したよ」
「校舎から学園長と野球部監督と顧問も歩いて来る」
すると、原島は、その華音と長谷川直美が気に入らない。
ますます、激高する。
「おい!華音!それから女!」
「この野球部の四番の話が聞けないのか!何をしゃべってる!」
「聞き取れないようなことを言うな!」
「この馬鹿野郎!そこに座れ!二人とも!」
「正座しろ!」
「いいから!すぐやれ!」
「すぐに正座しないと!」
この時点で、原島は完全に切れてしまったらしい。
思いっきり高く、金属バットを持ち上げ、華音と長谷川直美を威嚇する。
空手部主将の剛が、ついに口を開いた。
「おい、原島、正座しなかったらどうする?」
剣道部主将の塚本も、原島に迫る。
「そもそも、何故、金属バットを高く持ち上げる必要がある?」
「どこに野球のボールがある?」
しかし、興奮してしまった原島は、おさまらない。
「るせえ!」
「お前らみたいなマイナー運動部の分際で!」
「野球部に逆らうのか!」
また、思いっきり金属バットを地面に叩きつける。
そして、かん高い金属音がグラウンド中に響き渡る。
その金属音が消えた時だった。
「はい、原島君、そこまで」
吉村学園長が、後ろから原島に声をかけた。
「え?」
原島が、驚いて後を振り向くと、学園長の隣には憔悴した野球部監督の杉村と、厳しい顔の野球部顧問の武田が立っている。
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