第290話野球部原島と取り巻きVS華音と仲間たち

その原島と取り巻き連中が全員金属バットを持ち近寄って来る様子を見た華音は、首を傾げる。

「なんか、目付きが変ですね」

空手部主将の剛は、嫌そうな顔。

「原島か・・・いつも上から目線タイプだよな」

剣道部主将塚本は、原島たちの表情を探る。

「とにかく怒っているって感じかな、理由はわからないけれど」


華音と一緒に歩いている女子バレー部の生徒が、不安そうな顔。

「そういえば、クラスの中で、野球部の人が怒っているって噂を聞いた」

「何でも、花壇作りが気に入らないみたい」


テニス部の沢田文美も、それを聞いていたらしい。

「練習中に、花壇作りで人が動いているのを見ると、集中できないとか」

「コントロールが乱れるとか」

同じくテニス部の小川恵美は、その情報にムッとする。

「みんなで協力して作った花壇だよ、それが邪魔になるって、野球部って何様のつもりなの?」


その他、一緒に歩いている生徒たちも、文句を言い始める。


「いつも自分たちが応援されて当たり前って感じ」

「地区大会に応援をあれだけ来い来いって言っておきながら、私たちの大会なんて知らんぷりだもの」

「高校野球って、マスコミも騒ぐから、特権意識があるのかな」

「高校スポーツの花形とか王様とかさ」

「マジで威張っているもの」

「バットが、私のラケットに当たったの、謝りもしない」

「逆に怒鳴られた、どけ!弱小テニス部とか」



さて、そんな状態の中、華音たちの集団と、野球部原島たちの集団が、ほぼ目と鼻の先となった。

華音が少し頭を下げて、そのまま通り過ぎようとしたけれど、突然、野球部原島が怒声を華音に浴びせた。


「おい!華音!」


「はい」

華音は、立ち止まった。

何故、怒声を浴びせられるのか、理由が不明な様子。


原島は、手に持っていた金属バットを思いっきり地面に叩きつけた。

凄まじい金属音がグラウンド全体に響き渡る。

そして原島は、華音を大声で叱り始める。


「おい!華音!余計なことをするな!」

「何だ!あの花壇作り!」

「練習中に目に入って、邪魔だ!」

「お前らは、野球部の練習の邪魔をしたいのか!」

「俺たちはな、甲子園をかけて、プロをかけて練習しているんだ!」

「俺らの将来をつぶそうってのか?」

「この!ド田舎者!」

「わかったか!さっさと花壇をつぶせ!」

「それから、野球部全員に土下座しろ!」

「許すとは限らんぞ!」

「とっとと奈良のド田舎に帰れ!」

「邪魔だ!お前そのものが邪魔だ!」


野球部原島は、どうやら一旦怒ると止められないタイプのようだ。

かなり言葉もしつこく、粘着質の性格らしい。


しかし、華音は、冷静。

「確かに、僕は田舎者です」

「ただ、花壇作りは、みんなで協力して、学園の許可もあって、行ったもの」

「その花壇をつぶすとならば、僕の一存では決められません」

「花壇作りを手伝ってくれた皆さんと、学園側にも許可を得るべきと思うのですが」

「それとも、野球部の権限は、学園の権限を越えるのですか?」


華音は、実に冷静に話をするけれど、華音と歩いていた仲間たちは、「切れる寸前」、本当に厳しく怒りに震える目で、野球部原島と取り巻きを見つめている。

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