第253話柳生事務所ビルを見学(4)
小久保スタッフと華音は、柳生教会の扉を開けた。
小久保スタッフ
「小ホールの形式、それほど大きくはないけれど」
小久保スタッフの言葉通り小ホール。
天井は2階分まで高く、100席ぐらいの客席。
ステージには立派な演台がある。
ただ、それ以外には、「宗教的な装飾」は一切ない。
小久保スタッフ
「大学の講義室のイメージかな」
「小さなテーブルが客席ごとに」
華音はここで質問。
「教会とのことですが、宗派とかはどうなのですか?」
小久保スタッフは、即答。
「それは特にないよ、しいて言えば、演台でスピーチする人の言葉に関係するくらい」
「だから仏教もキリスト教もイスラムもユダヤもない」
華音は、納得した。
「それで、どこの宗教でも使えるように、シンプルな作りにしたんだ」
客席は、濃い目の青の椅子。
ステージと壁は白。
演台は、黒檀だろうか、シンプルとしか言いようがない。
小久保スタッフと華音は、ステージにのぼった。
小久保スタッフが、「まあ、それでも、飾りを欲しい場合にはね」と演台付属の何かスイッチを操作すると、ステージに大型スクリーンが登場。
仏教、キリスト教、イスラム他の装飾が、実に様々、図柄を替えて映し出される。
華音は、本当に驚いた。
「図柄の種類も多いですし、見ているだけで楽しい」
小久保スタッフは、そんな華音にクスッと笑う。
「宗教図象学、様々なイコンを研究するのも楽しいかもね」
「華音ちゃんには、合っているかも」
華音は次々に移り変わる宗教図象に目を奪われている。
「はい、とても興味深くて」
「やはり図象は、その宗教の本質を示しますし」
「どこの宗教も、当初は偶像崇拝とかにつながるので否定していたけれど、否定しきれなかった」
小久保スタッフは、フンフンと頷く。
「キリスト教圏の場合は、文盲率が高かったし、絵で示して聖書の場面を見せる、祭壇を豪華にして、天の栄光を示す」
「仏教も、その傾向がある」
「イスラムは文字と模様かなあ」
華音は、また考える。
「上の階の書庫にもたくさんの資料があるし、それを研究して、リンクさせても面白い」
「それにたまには、違う宗派の先生の講義もいいかなあ」
さて、小久保スタッフは、そんな真面目な華音が面白くて仕方がない。
「ねえ、華音ちゃん、ところでさ」
華音は、小久保スタッフの笑いの意味がわからない。
華音は宗教図象と、ここで行われる宗教講義への興味で頭が一杯。
真面目な顔こそすれ、小久保スタッフが何故笑うのか、さっぱりわからない。
小久保スタッフは、意味ありげな顔。
「最高の宗教図象の一つなんだけどね」
華音は、「えっと・・・」と目を閉じて考えようとする。
・・・その瞬間だった。
小久保スタッフの両腕は、しっかりと華音の背中に巻き付いている。
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