第240話華音は書庫にこもり、源氏物語研究(3)

さて、シルビアと春香は、あえて華音の書庫入りにつき合わなかった。

実は入りたかったエレーナがその理由を聞くと、

シルビア

「今西圭子と松田明美がまた華音を取り合って、バトルするかも、その仲裁が面倒」

春香

「何かにつけて、私たちを小娘扱いするから気に入らない」

との返事。


それでも、エレーナは華音が何の本を読んでいるのか、どうしても気になる。

そこで、エレーナは考えた。

「紅茶とクッキーを差し入れする」

「その時に、何を読んでいるか聞く」

「もし、面白そうだったら、そのまま居残る」

心が決まれば、エレーナの行動は、実に早い。

その考えをシルビアと春香に、告げた。

クッキーを準備、紅茶も準備、ティーカップは五つ準備した。

そして、書庫のドアをノックし、書庫に入って行くけれど、なかなか出てこない。


エレーナがすぐに出てくくると思っていたシルビアと春香は、首を傾げた。

シルビア

「ふむ、華音は何をしているんだろう」

春香

「エレーナがすぐに出てこないって、どういうこと?面白いのかな?」

シルビア

「どうも仲間ハズレ感があるな」

春香

「気に入らない、面白いことをやっていて、私たちをのけ者に?」

そもそも自分たちの意志で書庫に入らなかったけれど、この状態では気に入らないようだ。


シルビア

「私、ちょっとだけ行ってくる、春香はいいよ、別に」

春香

「こら、抜け駆けしない、ティーカップ二つ持った」

と、結局はシルビアと春香も、書庫に入ることになってしまった。


その、シルビアと春香は、書庫に入るなり、華音の説明する声が聞こえて来た。


「葵祭というのはね、エレーナさん」

「毎年四月の最初の酉の日に行われる賀茂神社の大祭」

「源氏の『葵』は、この大祭に由来するの」


シルビアはともかく、春香は、その説明で目が輝いた。

「あらーーー、うちも京都やで、しかも西陣や」

「その説明なら、うちのほうが上手や」

「華音なんて奈良育ちに任せられん」

と、シルビアを押しのけ、華音の横に立つ。


華音は、「え?」と言う顔で春香を見るけれど、春香は胸を張る。

そしてエレーナに、

「葵祭ゆうたらな、京都西陣出身のうちの説明を聞かなあかん」

と話かけると、エレーナは興味深そうな顔。


それでも、今西圭子が春香に説明をする。

「あのな、葵祭だけの話と違うんや」

「あくまでも源氏物語と日本神話のつながり、というコンテンツや」


松田明美が、補足する。

「それでな、今はその葵祭での重要な部分の話」

「つまり、源氏の最初の正妻の葵上と、愛人の六条御息所の車争いの話や」

「その準備というか予備知識としての葵祭なんや」


華音は、少々戸惑う春香に笑いかける。

「ねえ、春香さん、葵祭の説明お願いします」

「確かに僕より、春香さんのほうが説明が上手」

「その後、例の車争いについて説明するかな、生霊問題を含めたい」


少しホッとした春香に華音はやさしい。

「あのね、春香さんの着物姿って、すごく綺麗で可愛い、いつも憧れてた」


珍しい華音の告白に、春香も珍しく真っ赤になっている。

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