第237話ルーマニア大使館の結果報告と感謝、エレーナの同居完全決定

エレーナの真っ赤な顔と、シルビア、春香、今西圭子、松田明美の驚いたような顔、そして華音のキョトンとなるだけの顔はともかく、祖父の日記とルーマニア書籍の照合作業、それから導かれた情報は、相当に重要なものであった。


数日して、ルーマニア大使と、ステファン次官が、感謝状と記念品を持ち、華音の屋敷に訪れた。


ステファン次官が頭を下げ、報告する。


「まず、ルーマニアの旧政権の暗黒部分に由来を持つ犯罪組織のルーマニア国内の各アジト、及び世界各地の秘密アジトが判明しました」

「全ては、お祖父様の日記とルーマニア書籍の照合作業の結果からです」

「また、お祖父様が日記を書かれた当時では、その犯罪組織の新入り程度であったけれど、現在では幹部クラスになっている個人の名前も明らかになりました」


ルーマニア大使も、華音たちに頭を下げ、ステファン次官を補足する。


「全くここまで調べてあったとは」

「さすが大貿易商、情報収集能力が半端ではありません」

「ルーマニア警察当局もある程度、把握してはいたのですが、未特定の部分がありまして、お祖父様の日記をベースに内偵をしてみたら、全てに犯罪組織と犯罪者の痕跡があるのです」


「その後は、そこの秘密アジトで捕縛して、締め上げた犯罪者が自供」

「ルーマニアから、世界各国に輸出したワインコンテナに、猛毒薬品を紛れ込ませた資料も押収」

「輸出対象国の警察当局からも、深い感謝の意を伝えられております」

「本当に皆様の作業が、ルーマニワインの名誉と安全どころかルーマニアの名誉も守ってくれたのです」

「それから、輸出対象国の人々の健康もなのです」


華音は、少し顔を赤らめて聞いていたけれど、謝意に応えた。

「いえ、僕たちは、お祖父さんの日記と、ルーマニアの書籍の照合作業をしただけで、結果的に重要な情報が得られたということ」

「喜ぶべきは、悪意を持った人々の悪行が、その他の人に悪い結果を残さなかったことなのだと思っています」

華音らしい謙虚な反応であるので、シルビア、春香、今西圭子、松田明美も満足そうな顔。


ただ、ルーマニア大使は、笑顔。

「私たち、ルーマニア人は、恩を受けた人には、しっかりとお礼をしたいのです」

「感謝状は当然、記念品も極上の赤と白のワインを贈呈させていただきたい」

「ここのお屋敷の料亭にも、いつまでも無料で提供する計画があります」


少し戸惑う華音であったけれど、これは受けなければならないと思ったようだ。

「わかりました、大変ありがたいお申し出でありますので」

と、ワインを受け取った。


ワインを受け取った華音に、ルーマニア大使から、ウィンクをして、もう一言。

「エレーナもいかがですか?本人も贈呈されたいようなのですが」


するとエレーナは、真っ赤な顔。

シルビア、春香、今西圭子、松田明美は、難しい顔になる。


しかし、華音には「すぐには意味不明」らしい。

「うーん・・・数日、ここのお屋敷に確かに住んでいただいておりますけれど」

「そうなると、ここのお屋敷に、これからも住まわれるということなのでしょうか」

「僕だけの判断では、難しいかもです」

「部屋の改装とか、立花管理人に聞かないと」

そう言って立花管理人の顔を見ると、立花管理人は頷くだけ。

華音は、立花管理人の了承を把握した。


そして、華音もエレーナの同居を受け入れることにした。

「まあ、部屋は余っているから、いいかなあ」

「お祖父さんと、小さな頃からのお付き合いであれば、拒むこともしません」

「ごゆっくりお気が済むまで」


華音の言葉に、エレーナは、満面の笑顔、シルビア、春香、今西圭子、松田明美は、「まあ、仕方ない」と言う顔になっている。



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