第231話華音の祖父と秘密結社の代表の過去

華音にとっては「恥ずかしくてしかたがない」お風呂タイムがようやく終わり、再びお姉さまたちと、応接室に戻った。

すると立花管理人が、華音に報告。

「エレーナ様のお荷物一式、ルーマニア大使館から到着しております」

「すでに、洋館に搬入終了です」


これでは華音としては「細かい話」どころではなく、既成事実でしかない。

それでも華音は真面目、エレーナに声をかける。

「ねえ、エレーナ、お祖父さんの日記との照合作業をしようか?」

「危険も迫っていることだし」


ただ、エレーナは顔が赤いまま。

「今日は説明で疲れました」

「それより眠りたい」

と、華音の瞳をのぞきこむ。


「うーん・・・」とうなる華音に、他のお姉さまたちから声がかかる。

松田明美

「華音ちゃん、エレーナの言う通りにしなさい、私たちも横になりたい」

今西圭子

「雑魚寝でいい、華音ちゃんは、真ん中にする」

シルビア

「エレーナは頭も疲れている、お風呂でホンワカしている、そんな時に難しい作業は無理なの」

春奈は、直接的な物言い。

「さっさとエレーナの抱き枕になりなさい、今日だけは許す」


華音は、ここで思った。

「じゃあ、さっきの深刻な顔は何?」

「それに抱き枕って何?僕に安眠の自由はないの?」

「さっきの胸も、超苦しかったし」

ただ、華音は、「このお姉さまたち」には、口ではかなわないことは自覚している。


小声で「うん」と頷くと、さっそくエレーナが華音の腕を組むし、お姉さまたちは、席を立って、どんどん寝室に向かいだす。


「はぁ・・・」

とため息をつく華音にエレーナが少し真面目な言葉。

「華音君」

「お祖父さんの日記と言っても、全てを読むだけではないよ」

「おそらく書籍受け渡しの前後、数日間」

「その中に、暗号化した秘密結社の情報があるみたいなの」


華音は疲れ顔から真面目な顔に。

「エレーナは、それを誰から?」


エレーナは、真顔。

「それは・・・書籍を渡した人、つまり私のお祖父さんから聞いたの」

「華音君のお祖父さんは、その秘密結社の男、今は代表だけれど、当時コテンパンに倒したみたい」

「だから、何等かの関係があった」

「貿易品のワインかな、それに悪細工をして、それをお祖父さんが見抜いて、呼び出してコテンパンに倒して土下座させたみたい」

「そして華音君のお祖父さんは、私のお祖父さんに、その経緯と悪の秘密結社の情報は、信頼できる人以外には読めないような形で残しておくと、言ったんだって」

「いつか必ず悪だくみをするかもしれない、その時に参考にするようにとも」


華音は、フンフンと頷く。

「でも、祖父さんは、死んじゃったから、その秘密結社の男は、その悪細工が実行できると考えたのかな」

「祖父さんの暗号みたいな崩し文字なんか知らないんだ」


エレーナが華音の肩に顔をのせた。

「だから、日記を読める華音ちゃんが必要なの」

「おそらく几帳面なお祖父さん、絶対に決定的な何かを書いてあるはず」


華音が納得すると、エレーナはうれしそうな顔に戻っている。



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