第200話VS柔道部顧問小川(2)
華音は「これではしかたがない」と思ったのか、弁当箱を閉じ、立ち上がった。
すると柔道部顧問小川は、華音にまた怒声。
「この野郎!さっさと来い!」
とにかく自分が華音を教室まで呼びに来て、すぐに自分の指示に従わなかったことが、相当気に入らないようだ。
その柔道部顧問小川と華音が、教室内を数歩動いた段階で、萩原担任、文学研究会顧問田中蘭、そして吉村学園長が、顔を見せた。
萩原担任は、その顔を真っ赤にしている。
「小川先生、いきなり何をなさるんですか?」
「華音君をいきなり呼びに来る」
「しかもお弁当など、どうでもいいとか」
文学研究会顧問の田中蘭も表情が厳しい。
「華音君は、柔道部ではないんですよ?」
「そもそも格闘系とか、運動部には入らないということで、華音君の意志が示されています、それはご存知ですよね」
「それを知っていながら、わざわざ呼び出しに来る、華音君が柔道部にとって、何か不始末をしたのですか?」
ずっと様子を見ていた吉村学園長が口を開いた。
「とにかく、放課後に柔道部顧問、萩原担任、文学研究会の顧問、それから華音君は学園長室に来てください」
「特に、柔道部顧問には、事情聴取をしなければなりません」
「あまりにも、突然過ぎ、強圧気味ですので」
柔道部顧問小川は、そこまで言われて、ようやく周囲を見回した。
そして、自分でも、「これはマズイ」と思ったようだ。
「わかりました」と、学園長に頭を下げ、教室を出ていった。
教室全体がホッとした雰囲気になるなか、華音が頭を下げた。
「みなさま、申し訳ありません」
「僕のことで、不愉快なことになってしまいました」
「お弁当も途中の人もあったかと思います」
「本当に申し訳ありません」
そんな事を言って、頭を下げる華音に、生徒たちから声がかかる。
「華音君が謝ることないって!」
「マジ、気に入らない!あの柔道部顧問小川!」
「どうして、ああ強引なの?」
「篠山さんの事件を何も反省していない」
「強引に押しかけてきて、すぐ来い!」
「お前の弁当なんて、どうでもいい?ひどすぎるって」
弁当箱をしまったままの華音に、吉村学園長が声をかけた。
「華音君、弁当は最後までしっかり食べきりなさい、わかっているとは思うけれど」
吉村学園長は、弁当箱を開いたままの生徒に声をかける。
「お弁当を作ってくれた人、そのお弁当の素材を作ってくれた人」
「お弁当の素材となった動物や植物」
「全て、あなた方の栄養となるべく、努力や命を捧げたの」
「その気持ちを、しっかり受け取って、感謝し食べきることが、大切なの」
華音は、その言葉で弁当箱を再び開き、そして食べだした。
また、他の生徒も華音に続き、食べだす。
廊下に集まっていた他のクラスの生徒や、教師たちも自らの昼食の場に戻って行った。
さて、華音は弁当を食べながら、いろいろと考えている。
「僕が柔道部に入る意志がないことを知っていながら、あんな強引に呼び出しに来る理由は何だろう」
「何とかして、無理やりにでも、大会に出させたいのかな」
「とにかく、強引で焦っていた小川顧問」
「その焦る理由は何か・・・」
「それがわからないと、本当の解決にはならない」
「このままだと、単に学園長室に関係者が集まって、僕が柔道部に入らないことの再確認でしかない」
「とにかく、やむにやまれぬ事情があるのかもしれない」
華音は、柔道部顧問小川の暴挙のような言動の理由を知りたいと考えている。
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