第169話松田明美による真奈への事情聴取

別室の中の別室では、松田明美による真奈への事情聴取が進められている。

松田明美

「タレント事務所に入ったきっかけは?」

真奈

「はい、一週間前に吉祥寺を歩いていたら、さっきの大柄な人に声をかけられて」

松田明美

「何と言って、声をかけられたの?」

真奈

「女性アイドルグループに入れるかもしれないから、レッスンしたらどうかなって、レッスン料は無料って言っていましたので」

松田明美

「それなら大丈夫かなと思ったの?」

真奈の顔が少し沈んだ。

「いえ・・・大丈夫とか何とかって・・・そんなことではなくて」

「あの男の人の顔が怖くて・・・」


松田明美

「何かされたとか?」

真奈は震えた。

「いきなり、肩をグイって掴んできて・・・痛くて・・・」

「無料だって言ってるだろ?俺の言うことが聞けないのかって」

松田明美は、難しい顔。

「とても、逃げられない状態だったんだね」

「可哀そうに・・・」

「それで事務所とは、どういう契約?」

「未成年との契約だから、ご両親はご存知?」


すると真奈は、首を横に振る。

「いえ・・・契約とか何もしていません」

「スマホのアドレスだけです、それも一週間前に声をかけられて肩を掴まれた日に、アドレスを言わないと帰さないって言われたので」

松田明美

「一週間前に、そういう形で連絡が取れるようになって・・・」

「それで今日はどうして吉祥寺に?」

真奈

「はい、レッスン場所が吉祥寺と、来なかったら自宅に押し掛けるって」

松田明美

「ただ、レッスンということだけで、吉祥寺に来たんだね」

そして、少し声を低くした。

「フロントで、あの大男に脅されていたみたいだけど、話せる?」


真奈は、本当に嫌そうな顔になった。

「あの大きな男の人が言って来たのは、レッスンは突然中止になった」

「別の仕事が入った」

「超有名な野党の政治家が、君の写真を見て、相当お気に入りだ」

「どうしても、写真でなくて、自分の目で直接見たいと言っている」

「これも仕事だ、大金が入る、もちろん報酬も渡すって」


松田明美は、フンフンと聞いている。


真奈は、話を続けた。

「私も、見られるだけならと思っていたんですが・・・」


松田明美は、真奈の表情が赤くなったのを見逃さない。

「・・・もしかして・・・服を着ている姿だけではなく?」


真奈が耳まで赤くなった。

「はい・・・大きな男の人に聞いたら、それもありうるって」

「でも・・・そんなの嫌です」

「知らない人の前で、肌をさらすとか、脱ぐとか」


松田明美の顔が厳しい。

「ホテルで大金を払って、こんな15,6歳の女の子と二人きり?」

「見るだけで済まないよ、きっと・・・」

「とんでもない政治家だ・・・犯罪行為だよ・・・こんな奴に税金払っているのか・・・絶対、余罪がある」


真奈は、まだ顔が赤い。

「そんな仕事嫌ですって、断ったら、脅されて・・・」


隣の部屋では、華音、シルビア、春香、今西圭子は、不思議な力で聞き取っているようで、全員が厳しい顔になっている。

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