第161話お姉様方と長谷川直美の出会い、全員でホテルに?

華音は、やはり礼儀正しい。

文学研究会の部長長谷川直美に対してお辞儀をしてから、連れのお姉さま方を紹介する。

「こちらが今西圭子さん、奈良の高畑出身、現在は文化庁に勤務されています」

「僕には遠縁になります」

「そして、こちらがシルビア、国籍はベルギーですが、ほとんど日本暮らし、従姉になります」

「それで、この人は春香さん、京都の西陣出身、従姉です」

今西圭子、シルビア、春香が長谷川直美に、軽く頭を下げる。


ただ、井岡スタッフはあえて紹介しない。

あくまでも少し離れた場所での警護なので、それに専念するためになる。


今度は長谷川直美が自己紹介。

「華音君の学園の三年生です、華音君が入ってくれることになった文化研究会の部長をしています」

そして今西圭子に声をかける。

「今西さん、私も奈良出身なんです」

「奈良町の元興寺さんの近く」


今西圭子はにっこり。

「へえ、お近くねえ、それは意外」


すると長谷川直美が今西圭子に尋ねる。

「高畑の今西さんというと、あの旧家の?」


今西圭子は、微笑む。

「いえ、旧家というよりは、ただ古いだけです」

「でも、長谷川家も、よく耳にしたお家です」


突然始まってしまった奈良のお家談義を聞いていた華音の脇をシルビアがつつき、文句。

「このアホ!さっさと喫茶店に誘導するの!」

春香も続く。

「どうしてこう・・・おっとりなの?」


さすがの華音も、こう言われては仕方がない。

キョロキョロと喫茶店を探していると、井岡スタッフが手で合図。

どうやらいつの間にか、入れそうな喫茶店を見つけたか、あるいは予約でもしたのだろうか。

とにかく華音は、井岡スタッフに行き先を任せることにした。

そして、女性たちに、ようやく声をかける。

「あの、この雑踏の中で、立ち話もどうかと思いますので」


するとシルビアがさっそく反応。

「華音、アイス食べたい」

春香も、グイッと華音に迫る。

「美味しい珈琲が飲みたい」


今西圭子は、それでも大人。

華音と井岡スタッフの動きも把握しているようだ。

長谷川直美に会釈して、

「まあ、それではご一緒に」


長谷川直美も笑顔。

「うれしいです、こんな大都会で奈良のお方と」

「ホッとします」


さて、華音が目指しているのは、どうも喫茶店ではないようだ。

喫茶店が何軒もあるけれど、通り過ぎてしまう。

これにはシルビアが首を傾げる。

「華音!どこに行くの?」

春香は、華音のお尻を叩く。

「ねえ!何を考えているの?どこに行くの?」


しかし、そんなことを聞かれた華音とて、しっかりとは返事ができない。

なにしろ見知らぬ都会の街にして、実際は井岡スタッフについて歩いているだけなのだから。


それでも、井岡スタッフがもう一度、華音に手で合図。

華音が注目して見ると、井岡スタッフの前方に、高級ホテルが見えている。


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