第160話瞳と母好子の会話は続く、華音の一行は吉祥寺に

「ところでね」

母好子は、真っ赤になった瞳に真顔。

「お屋敷のマッサージの人も知り合いなの、実は」


瞳の身体がビクンと震える。


好子は表情が厳しい。

「貴方の胸にも呪印が出たの?」

「それも、吉祥天」


瞳は、そこまで知られているのならと、「うん」と頷く。

すると、好子はため息。

「はぁ・・・」


瞳は、そのため息の意味が不明。

「・・・だから何?」


好子は、途端に、うれしそうな顔。

「そうなると、瞳」

「華音ちゃんの、お嫁さん候補どころじゃないって」

「華音ちゃんのお尻の呪文の毘沙門天と、吉祥天って夫婦だもの」

「うーん・・・そうかあ・・・華音ちゃんが婿君になるのか・・・」

「それでお迎えに来たのかなあ、ウンウン、これはうれしい」

「こんなに早くねえ・・・これも縁かなあ」

「華音ちゃんなら、何も心配がない」


瞳は、そんなことを言われて、また顔が赤い。


好子の顔が厳しい。

「そうなるとさ、マジで瞳のお習い事をしっかりしないとさ」

「華音ちゃんは、全く問題ないの」

「むしろ、瞳が不安」

「まだまだ、あのお屋敷で通用するレベルの足元にも達していない」

「娘が、あのお屋敷に入ってヘマばかりしていると、私が恥かしいもの」


瞳は、ムッとした顔。

「そんなヘマとか言わないでよ、気に入らない」

「私だって、それが心配だからお願いしたの」


好子は、それで少し笑う。

その笑いには、何か含みがある。

「まあ、子供の頃の華音ちゃんのお尻、可愛かったなあ」

「また見たいなあ、すべすべしてプリンとあがっていてさ」

「ねえ、まったく、瞳にはもったいない・・・」


そして残念そうな顔。

「あーーー!生まれる順番、間違えた」

「瞳と逆になりたかった」


瞳は、こんな母に呆れるやらムッとするやら、首を傾げている。



さて、華音たちの一行は、井の頭公園から吉祥寺の街に入った。


シルビアがニヤリ。

「ねえ、華音、西の京とは大違いでしょ?」

春香も、華音をいじる。

「うちもな、京都出身やから、奈良はメチャ田舎に見える」

今西圭子は奈良出身、それでも華音の味方。

「いいの、華音ちゃんは、すぐに順応するタイプ」

「奈良には奈良の良さがあるの」

後ろからついてきた井岡スタッフも、華音を弁護。

「観音様の知恵もあるから、すぐに馴れる」


さて、当の華音は、誰か知っている人を見かけたようだ。

華音は連れの一行に教えた。

「文学研究会の長谷川直美さん、部長です」


長谷川直美も華音を見つけたようで、にっこりと手を振って歩いて来る。



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