第111話篠山の悪事が発覚となる。
吉村学園長の厳しい追及で、とうとう泣き出してしまった篠山には、その涙よりも、恐ろしい事態が待っていた。
吉村学園長は、クラス担任に、「篠山君の鞄を全て学園長室に持って来るように」との指示を行ったのである。
すると、泣いていた篠山の涙が、ピタリとおさまった。
そして、今度は、震えだしている。
吉村学園長の表情は、ますます厳しい。
「よからぬ噂を聞いたのでね」
「まあ、何もないとは思いたいところだけど」
「一応、何もないことを確認するから」
その吉村学園長の言葉で、篠山の身体の震えが、いっそう激しくなった。
とにかく、座っているのに、脚がガタガタと震えている。
顔は、泣くどころではない。
真っ青になり、すでに視点がさだまらない。
クラス担任が篠山の鞄一式を持って来るのと、篠山の父が学園長室に入って来るのは、同時だった。
吉村学園長は、立ち上がって、一応は頭を下げる。
「篠山さん、急な呼び出しにも関わらず、いらしていただいてありがとうございます」
しかし、表情は厳しい。
篠山の父は、困惑と怒りの混ざったような顔で、学園長室内を見る。
真っ青な顔で、ガタガタと震える息子を見ながら、
「あのさ、こっちも忙しいんだ」
「公務もある、区議なんだ」
「それに、息子をこんな風に怯えさせたのは学園の責任だろ?」
「お前たちには、教育をする責任があるんだから」
と、また文句を言い始めた。
吉村学園長の表情が、また厳しくなった。
「そうですか、そうなると、まず実態を見ていただきましょう」
吉村学園長が、リモコンを操作すると、学園長室の壁に、大きなスクリーンがおりてきた。
吉村学園長は低い言葉。
「これが、先ほどお話した現場です、全て動画になっています」
「学園内のすべての様子は、録画、一定期間残します」
その言葉通り、篠山が剛に暴言を放っている様子。
コーラ入りのペットボトルを剛に投げつけるところ。
コーラの炭酸が目に入り、苦しむ剛。
その剛に、ニタニタと笑いながら、後ろに回り首を絞めている様子。
華音が入ってきて、「正論で説得される様子」も映っている。
吉村学園長は、篠山の父の顔を見た。
「これね、学園内に知れ渡っているんです」
篠山の父の顔も蒼くなった。
さすがに、これはまずいと思ったようだ。
「・・・何とかならないのか?示談にして欲しいって、言っただろう」
吉村学園長は、首を横に振る。
そして、隣にずっと座っていた柔道部顧問の小川に指示。
「篠山君の鞄の中身を全て開けて、テーブルの上に」
篠山の震えが、ますますひどくなった。
篠山の父は、けげんな顔。
何故、そんなことをするのか、わからないようだ。
そして出て来たのは、教科書、参考書、文房具までは、まだよかった。
大型のハンティングナイフが出て来た。
吉村学園長の顔は厳しい。
柔道部顧問小川も、信じられないというような、顔で篠山を見る。
そして、もっと「問題のあるもの」が出て来た。
現金が入った財布が何個も出て来た。
吉村学園長が篠山に尋ねた。
「これ、どうしたの?全てが篠山君のものなの?」
「どうみても違うよね、この財布には定期が入っていて、篠山って名前じゃないもの、一年生の女の子だよ、これ」
「へえ、これは二年生の男の子?」
「全部で、6個もあるよ、これ・・・どうしたの?」
篠山の震えは、ますます激しくなっている。
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