第56話お弁当タイム、華音の味覚?
教室に入った華音は、いつもの通り。
雨宮瞳も、同じように華音の隣に座るけれど、周囲の生徒が寄って来た。
「朝から大変だったね」
「空手部の主将が、ひどいことを言って、逆に先生方にコテンパンに叱られて」
「華音君、空手部にも挨拶をするの?」
「ねえ、剣道ってイメージもないけれど、空手のイメージも全くないよね」
・・・いろんなことを言ってくるけれど、華音は穏やかに笑っているだけ。
華音の穏やかな笑みで、集まった生徒たちは、しだいに落ち着き、午前中の授業は平穏、静穏の中に終わった。
雨宮瞳は華音の顔を見た。
「ねえ、華音君、今日のお昼は?」
その問いかけには、ご相伴を狙う他の生徒も注目する。
華音は恥ずかしそうな顔。
「あまり・・・注目されても・・・」
と言いながら、鞄から四角い箱を取り出した。
ということは、お弁当と言うことになる。
雨宮瞳は少しホッとした。
そしてまた、聞いてみる。
「今日はここで?」
また他の生徒から注目が集まる。
華音は、頷いた。
「どっちでも・・・でも、もう一品頼むこともないので」
どちらかというと、教室で食べる気持ちのようだ。
他の生徒からは、安心したような声。
「沢田さんがベタベタするからこっちがいい」
「私たちの華音君だもの、お姉さん方に取られたくないしさ」
雨宮瞳は、思った。
「う・・・こいつらも狙ってる?危ないなあ・・・」
そんな状態で、また机をつけての「お弁当の集い」となった。
華音のお弁当は、「幕の内弁当」のような感じ。
焼鮭、レンコンはさみ揚げ、照り焼きチキン、ホウレンソウの胡麻和え、玉子焼き、こんにゃく、ニンジンの煮物などのほぼ定番、白いご飯にゴマ塩が振りかけられたもの。
華音の「いただきます」で、全員が素直に唱和、手を合わせて、食事開始になる。
雨宮瞳
「今日も、従姉のお姉さんが作ってくれたの?」
華音は首を横に振る。
「今日は、お屋敷の料理人が作りました」
他の生徒からも声がかかった。
「マジで美味しそうなんだけど・・・」
華音は少し難しい顔。
「そうですねえ、確かに美味しいけれど」
雨宮瞳は、華音の表情の変化がわからない。
「だって、あのお屋敷の料理人でしょ?」
どう考えても大豪邸の料理人の作った幕の内弁当、美味しくないとは言えないと思う。
華音は、少し笑った。
「関西風と言うのかな、味付けがあっちに慣れていて」
「こっちは味が濃いかな、ニンジンの味も違います」
雨宮瞳は、そこで考えた。
「ねえ、華音君、玉子焼き交換しない?一度食べてみたい」
華音は、素直だった。
「あ、かまいません、どうぞ」
雨宮瞳は、周囲の生徒の「ムッと」した顔は無視した。
そして、華音のお弁当箱から玉子焼きをゲット、口に入れる。
途端に目がパッと開いた。
「マジ?美味しすぎ!どうしてこれに首を傾げるの?」
華音は、ただ、黙々と食べている。
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