第51話瞳の華音ゲット計画とは?

母好子は、話を続けた。

「華音君とシルビアちゃんと春香ちゃんで、みんなの前で歌を歌ったの」


瞳は興味津々。

「え?何の歌?」


好子は笑った。

「あはは、まだ、小学校一年生でね」

「可愛いの、カモメの水兵さんだったかなあ」

「奥様がピアノを弾いてね」


瞳は、ふいてしまった。

「へーーー・・・華音君のカモメの水兵さん?聞きたい!上手だった?」


好子は、また笑う。

「うん、上手だよ、声も高い声が出るし、きれいなボーイソプラノでねえ」

「シルビアちゃんも春香ちゃんも、にこにこと」


瞳は、シルビアと春香を思い出した。

「二人とも、華音君を頼りないとか、お願いしますって言っていた」

好子はまた笑う。

「そうねえ、お姉さんみたいなものだから、そうなるのかな」

「姉から見た弟なんて、そんなもの」


瞳は思った。

「少しはわかった」

「だから大切にしなくては」

そして、珍しく母に頭を下げた。

「ねえ、母さん、料理とか作法を教えて」


母好子は、また笑った。

「あらあら、珍しい、三日坊主どころか一日坊主の瞳が?」

「華音君をゲットしたいの?」


瞳には図星だった。

顔が赤くなる。

「う・・・その前に・・・またお呼ばれした時にね・・・」

「恥ずかしいとね・・・」

そして、また懸命に母にスリスリすることになった。



その翌朝、瞳は、いつもより早く三鷹台の駅についた。

そして、隣の駅、久我山で一旦、ホームに降りた。

目的は、一つ。


「華音君は久我山から乗る、だから、偶然を装って、一緒になる」

「そして、ごくごく自然に、一緒に登校する」

「それを続けて、既成事実化して、華音君をゲットする」


改札口で、待とうと思ったけれど、それは「不自然過ぎる」と思ったので、あくまでもホームで華音を見かけた瞬間に、さっとすり寄るように近づこうと思った。


しかし、もし、華音が自分より早く井の頭線に乗ってしまっていたら、「偶然に」顔をあわせることもなく、全く無意味な行動になる。

瞳としては、「ハラハラ」しながら、華音を待つことになった。


その華音を待つ瞳の顔がパッと輝いた。

エスカレーターに、シルビアと春香の顔が見えた。

そして、その後ろに、華音の顔が見える。


「やった!」

瞳は、うれしくて仕方がない。

そして、そのまま「偶然を装う」ことを、忘れてしまった。


「華音くーん!」

大きな声で華音に手まで振ってしまった。


華音は、驚いたような顔。

それでも、ニッコリと笑い、手を振り返してくる。


瞳は、我慢できなかった。

自分から、華音に走り寄っていく。





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