第40話三鷹台vs千歳烏山の攻防戦?
華音は、それでも条件をつけた。
「えっと、あまり人数が多くなっても混乱するばかりになりますし、せいぜい二人くらいで」
「それぞれの方のお帰りの路線などあると思いますので」
雨宮瞳が尋ねた。
「ところで、華音君のお家って、どこなの?」
華音の答えに、周囲に集まっている生徒たちが注目する。
華音は、スンナリと答える。
「はい、井の頭線になりまして、久我山になります」
その答えに、雨宮瞳がガッツポーズ。
「うん、私、三鷹台!」
「すっごい近い!隣!」
「わーーー!これから毎日、一緒に登校しようよ!」
もう、腕も組もうかと、その寸前で大興奮。
沢田文美は、その瞳を見て、苦虫をかみつぶしたような顔。
「瞳!私だって千歳烏山なの!」
「路線は違うけどさ、歩いて行けるもの!」
「それを知っていて、どうして腕を組もうとするわけ?」
珍しく雨宮瞳が反発。
「そんなこと言ったって、久我山でも一丁目とか三丁目とかあるんです」
「一丁目は三鷹台に近いですし!」
「そもそも路線が同じです!」
沢田文美に、一歩も引かない。
雨宮瞳と沢田文美のバトルに、たまりかねた他の生徒が華音に尋ねた。
「私は調布だから今日は無理だけどさ、華音君は何丁目なの?」
華音は困ったような顔。
それでも答えた。
「はい、三丁目になります」
「確かに千歳烏山は、すごく近いです」
今度は沢田文美が、ガッツポーズ。
雨宮瞳は、口をへの字に結んでいる。
華音は、話をまとめた。
「それでは、雨宮さんと、沢田さんだけに」
「他のお方は、またゆっくりと招待します」
「土曜日とか部活のない日曜日にでも」
雨宮瞳と沢田文美はニコニコ。
他の生徒たちは、「まあ、仕方がない」と言った様子。
「今日は遅いから仕方がないよ」
「招待してもらったら、何かケーキでも」
「一緒に暮らしている女の子を見たいなあ」
「あーーーー行きたいけれど、路線がねえ・・・時間も時間だし」
さて、そんな状態で、華音、沢田文美、雨宮瞳は一緒に井の頭線に乗り込んだ。
華音は頭を下げる。
「すみません、こんなことになってしまって」
沢田文美は、うれしくて仕方がない。
「いいの!お礼もしたいし、お友達にもなりたいし」
「私、先輩だもの」
と、華音にすり寄り気味。
雨宮瞳は、また焦った。
それでも尋ねた。
「ねえ、二世帯住宅だから、アパートではないよね」
尋ねてしまってあまりにも愚問と思ったけれど、
華音は頷く。
「はい、去年の夏に亡くなった、母方の祖父母の古い屋敷なんです」
「誰も住んでいないと、よろしくないということになって」
「僕と、従姉の二人が住むことになりました、少々は改築しましたけれど」
沢田文美、と雨宮瞳は、華音の説明から、「相当に古い屋敷」のイメージが浮かんできている。
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