第9話冷たいテニス部員と何もしない顧問と華音
走り出してしまった三田華音を雨宮瞳も追いかける。
そして走りながら
「華音君、私がテニス部なんだから、一緒に!」
「華音君も紹介しないと、全員初対面でしょ?」
と声をかける。
華音もすぐに応える。
「はい、雨宮さん、是非、そうしてください!」
「何より、怪我人は相当痛いはず!」
「少しでも、面倒な時間はさけましょう」
声は大きくなっているものの、やはり冷静沈着。
雨宮瞳は、そこで感じた。
「もしかして華音君、私を走らせるために、自分で走り出したのかな」
「さっき、ちらっと見たのは、その合図?」
「ついつい三井先生の話を聞いちゃったけれど」
「うーん・・・これは華音君のほうが正解だ」
「まずは怪我人の手当をしなくては・・・」
「そもそも走り出すべきは、テニス部の私だった」
「少し反省しなければならない」
雨宮瞳は、少々、落ち着きがない自分を反省している。
さて、三田華音と雨宮瞳は、テニスコートの入り口についた。
そして、ここではやはり、テニス部の雨宮瞳が先にテニスコートに入る。
倒れてしまって動けない二年生の沢田文美の周りには、テニス部顧問高田とたくさんのテニス部員が集まっていた。
しかし、脂汗を流して苦しむ沢田文美の周りで集まって見ているだけ、「大丈夫?」などと声をかけるだけで、それ以外の動きが全くない。
それどころか、
「さっさとどいてよ」とか、
「私たちの練習の邪魔」
「あーーー気分害した、今日は練習サボろう」
などの声も出るような雰囲気。
また、テニス部顧問高田も、「動かすのが面倒だなあ」「これで大会に間に合うかなあ」などつぶやくだけで、全く動きを見せていない。
雨宮瞳は、テニス部顧問や同じ部員たちの、そんな様子にはムッとしたものの、大声で叫んだ。
「保健室から、担架を持って来ました」
「皆さん、少し手伝ってください!」
その雨宮瞳の声で、沢田文美の周りに集まっていたテニス部顧問やテニス部員たちが、一斉に雨宮瞳と担架を持った三田華音に注目。
「瞳!その子誰?」
「部外者が入っていいの?」
「勝手に入れないでよ!」
「何で担架なの?ペアの人が担いでいけばいいじゃない!」
口々に、逆切れされている。
「うっ」と詰まってしまった雨宮瞳に変わって、三田華音が頭を下げた。
「はい、はじめまして、今日、転校してきた三田華音と申します」
「いろいろと、分を超えてしまったようで、申し訳ありません」
「ただ、そこで右足首を抑えて苦しんでいる沢田さんが心配なあまり」
「保健室の三井先生の許可を得て、担架を持って来ました」
「本当に申し訳ありませんが、まずは沢田さんを、保健室に運ばせていただきたく思います」
相変わらず、やさしく落ち着いた声、その上、テニス部顧問とテニス部員に頭を下げて、怪我人を保健室に運ぶと言っている。
そして、保健教師の三井が情報を伝えたらしい。
吉村学園長も保健室の三井春香と一緒に、テニスコートに姿を見せている。
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