第65話 ~カラットはどこに?~

 翌朝。朝食の時間になると、テーブルにみんなが集まっていた。

 ジェコとマリエットが作った豪勢な手料理が、並べられていた。

 だけどもポメとデデは、どうしても昨日のことが、頭にちらついていて、浮かない顔をしていた。

 そんな二人に、ジェコは顔を近づける。

「いずれ分かってくれる時が来るさ。それまで待つんだよ」

 ジェコはすぐさま、自分の分の料理をばくばくと食べ始めた。そんな様子を見て、デデはどっと大きなため息をつく。

「そんな悠長でいいのかねぇ。なぁ?」

 デデはポメにだけ聞こえるように、そう言った。

「…………」

 ポメはきょろきょろと、食卓を見回していた。

「どうしたんだよ、ポメ」

「いや、それがさ」

 もう一度ぐるっと、食卓を見回した。

 孤児院にいる子たちは朝食になると、全員ここに集まるはず。

 でもカラットだけは、見当たらなかったのだ。

「あの子、どこ行っちゃったんだろう」

「あぁ~。どうせまた、冒険ごっことかで出てったんじゃないのか?」

「ご飯も食べずに?」

「分かってねえなぁお前」

 デデはぐいっと顔を近づける。

「朝食の支度で忙しい、このときが一番の逃げどきだろ?」

「そう、なのかなぁ」

 デデの言うことは、よく分かる。でもなんだか、ポメの中には引っかかるものがあった。

 ちらっと、マニの方を見てみた。じっと鋭い目で、ある方を向いている。

 そこには二人の子がいた。イヌの男の子と、トリの女の子。

 二人はときどき、何か言いたげに目を見合わせる。でも何も言わずに、もくもくとご飯を食べていた。

『どうしたんだろう?』

 それがなんだか、ポメにはちょっと引っかかっていた。

 もしかしたら、マニもなにか引っかかっているのかもしれない。


 ―――


「で、ポメはどうすんだよ?」

 朝食を食べ終えて、二人はいつものように二階の窓辺で座っていた。

「なんのこと?」

「ここを抜け出すことさ」

「…………」

 それを言われると、ポメは口を閉ざしてしまった。

「ジェコはああ言ったけどよ、いずれなんて待ってられないだろ」

「うん、そうだよね」

「そうだよね……じゃねえだろ!」

 がばっと、とびかかるように、デデはポメに顔を近づけた。

「ここを抜け出すかどうか。お前にその意思があるのか、聞いてんだよ!」

「ぬ、抜け出すって……」

 ポメはまた黙りこくった。

『僕だって、考えてないわけじゃないよ……でも』

 それを考えると、どうしても、マリエットの顔がちらつくのだった。

「それって、マリエットさんにお礼も言わずに、出てくってことだよね……」

「…………」

 ぶすっとした顔で、ポメを見ていた。デデは突然頭をくしゃくしゃにして、大声を上げた。

「あぁぁもう、オレだってモヤモヤしてるよ! おばさんに黙って出ていけるかっての!」

 どん、と床に倒れ込むように、デデは横になってしまった。

 でもそんなデデを見て、ポメはちょっとだけ嬉しくなって、微笑んだ。

「あれ?」

 窓の外を見てみると、マニがいた。その前には、二人の子どもがいる。

『あの子たちってさっき、マニが見てた子だ……』

 ポメは声をかけた。

「一体どうしたの?」

 こっちに気づくと、マニは手を振った。

「この子たち、カラットとよく一緒に脱走して遊んでるのよ。カラットのこと、何か知らないかなと思って聞いてみたら……」

 二人はしゅんとうつむいていた。

「昨日の夜、孤児院を抜け出して墓地に行ったみたいなんだけどね、その時にはぐれたって……」

 そこまで言うと、イヌの子がその言葉を遮った。

「あ、あいつのことだからさ! おばけに怖がってたの知られたくなくて、どっか逃げてるんだよ!」

 トリの子も、続けて声を上げた。

「そうそう、そうよ! アイツいっつもミエはるんだもの!」

「でも、はぐれたのは事実よね?」

 マニはずいっと顔を近づけた。二人の口が、ぐっと閉じた。

「どうして、おばさんに言わなかったの?」

「そ、それは……」

 二人ともまた、顔を下げてしまった。

「ともかく、私は墓地に行くけど、ポメくんたちもどう?」

「で、でも僕ら……」

「人探しなんだから、あとでマリエットさんに言えば、分かってくれるはずよ」

「……うん」

 ポメがうなずくと、デデはまるで飛び上がるように起きた。

「よっし、ひっさびさの外出だな!」

 二人を見て、マニはふふっと微笑んだ。

「それじゃ、アナタたちは正直に、マリエットさんにこのことを伝えてね」

「は、はい……」

「分かりました……」

 二人はとぼとぼと、孤児院へと戻っていく。

「それじゃ、行こうか」

「へへ、一階に下りるなんてまどろっこしいぜ!」

 デデはひょいと、窓から飛び降りた。

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