第56話 ~やんちゃなあの子はオシャレなうろこ~

 ―――


「そいじゃ、オイラはロココと合流するからさ。大人しく、留守番しておけよ!」

 次の日、朝飯をがっつりと食べ終えたジェコは、早々に外へ出ることになった。

 目的は、ポメの代わりに情報探し。ルーチ・タクトの手がかりを、ロココと一緒に探すことにしたのだった。

「うん、いってらっしゃい」

 ポメは手を振ってジェコを見送る。子どもたちも「バイバ~イ」と元気よく手を振っていた。

「さてと……僕たちも忙しくなりそうだね」

「ま、こうしてかくまってもらってるしな。その分は、俺らも面倒見ないとな」

 当のポメたちは、孤児院の子たちのお世話を任されたのだった。

 なにせ、みんな外に出られなくって、退屈している。外はとっても危険だって、マリエットさんは子どもたちに外出の許可を与えていなかった。

『僕らがいるってことで、マリエットさんやマニは安心して買い出しに行っちゃってるしね……』

 子どもたちの相手……少し楽しみな反面、朝からの元気っぷりを見ていると、自分たちの体力が持ってくれるのか…・・・と、不安になるポメだった。

 

 ―――

 

「ふぅ、結構疲れちゃったな…・・・」

 思った通りだった。子どもたちの元気っぷりは、底知れなかった。

 怒ったときの反応が面白いとかで、とくにデデの方が、子どもたちに人気だった。でも、そのおかげでデデは完全にぐったりしてしている。

「とりあえず、昼飯の十二時まではまだ時間はあるね」

 その頃にはマリエットたちも、一旦帰ってくるという話であった。ポメは、孤児院の二階の窓辺で座っていた。

 窓の外からは、あの大樹が見える。きっと、町のどこからでも見えるだろう大樹。

「素敵なとこだねぇ……なんだか、見ているだけで安心するよ」

「ふぅん、そうか?」

 突然、声が聞こえた。ポメはびくりと耳を大きくさせる。

「なーなー。お前、ポメって言うんだろ?」

 振り返ると、そこに一人の男の子がいた。カラフルなウロコを背負った、センザンコウの子だ。

「キミは、えっと……」

 確かこの子は、ジェコから話を聞いていた気がする。思い出そうとしていると、男の子はふふんと鼻を鳴らしてポメの横に座った。

「俺はカラット。よろしくな!」

 カラット、その名前はジェコからも聞いていた。

とにかく、結構やんちゃな子だという話だ。ジェコも、痛い目を見たとか……。

『まぁでも……悪いことしそうな子じゃない、よね?』

 ジェコの言葉を頭に残しながら、ポメはにこっと微笑んだ。

「カラットくん、よろしく」

 カラットもニッと微笑み返して、握手をする。とするや否や、ぐいぐいとポメの方に体を寄せてきた。

「なーなー、お前ってさ、色々旅してここに来たんだろ?」

 ポメが頷くと、カラットの目はキラキラと輝いた。

「旅ってさぁ……どんな感じなの!?」

「うーんっとね」

 なんだか、フロッカでのことを思い出す。クゥも、旅の話を楽しそうに聞いてたっけ。

「マリエットさんが帰ってくるまで、まだ時間があるしね……うん、色々話してあげるよ」

 そうしてポメは、旅の話をした。ノウィザーから、フロッカまでのこと。どんな町だったか、どんな風に美しくって、どんな食べ物がおいしかったかも。

でもカラットは、やんちゃとはいえ、ポメよりもまだまだ年下の子だ。怖い話は、よくないと思って……オロオロさまや、呪いのものたちの話は、しないようにした。

「へへぇ~、やっぱりわくわくするぜ! 外の世界の話って」

「外の世界って……大げさだよ」

 そう言うと、カラットは急にポメを睨みつけた。ぎっと目を尖らせて、口をぎゅっと曲げている。

「ふん、こんな退屈な町に住んでないから、そんなことが言えるのさ」

「で、でも……トリキリデって、素敵なとこだと思うよ」

「一日いたくらいじゃ、何も分かんないよ」

 カラットはぷりぷりと怒っている。

「でも、すごいじゃん……こんなにおっきな樹に、見守られて」

 ポメは、窓の外を指さした。窓からじゃ、全貌なんて見えないほど大きな大樹。

 でもカラットは、なんだか面白くなさそうにそっぽを向く。

「あんなの、珍しくもなんともないよ。それにあの大樹の雰囲気に合わせるようにって、外の世界のファッションとかも取り入れようとしないしさ」

 タン、タン。カラットの短いしっぽが、床を叩いていた。

「ファッション?」

 ポメがそう言うと、カラットは背中のウロコをちらちらと見せる。

「こんな風に、もっと洒落た感じにすりゃいいのにさ」

 それはとっても、カラフルなウロコだった。ピンクに紫と、かわいらしい色が混じっている。なんだかこういうお菓子があった気がすると、ポメは思った。

「あーあ、俺も旅に出てみたいよ」

 カラットはごろんと横になって、うずくまった。その姿はまるで、殻にこもるようである。

「でもさ、旅って危険だよ? 町にずっと住んでいられるのだって幸せで……」

「なんだい!」

 カラットは急に起き上がって、大声を上げた。ポメはびくりと体を震わせる。

「お前も……マリエットみたいなこと、言うんだな」

 カラットは立ち上がると、ひょいと窓の縁に飛び乗る。

「ちょ、ちょっと何してるの!?」

 そこは二階の窓。足を滑らせたりでもしたら、下へ真っ逆さまだ。ポメは慌てて手を伸ばす。カラットはその手をバシッとしっぽではじいた。

「ふん、いつもの遊び。冒険ごっこだよ!」

 そう言ってカラットはひょいと飛び降りた。この、二階の窓から。

「危ないよぉ!」

 ポメは慌てて窓から身を乗り出す。下には、くるりと回ってにやりとこちらを見るカラットがいた。

「へっへん、これくらい俺にとっちゃ“もーんだーいなーし”」

 まるで歌でも歌っているかのように、そう言った。

 ポメは追いかけようか、悩んだ。このまま見過ごしても、マリエットさんに悪い。でもあれだけ言われてたのに、外に出てしまっていいのか・・・・・。

「へっへん、いくじなし」

 まるでポメが二階から飛び降りるのが怖いと思って、カラットはそう言った。

「……連れ戻すため。うん、仕方ないよ!」

 ポメは急いで、一階へと駆け下りた。外へ出ようと、決心したのだった。でも口ではそうは言ったけども、カラットの言葉に少し、ほんの少しだけ、むっとしていた。

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