第2話 ~町はいつもより賑やかで~

 アルメリシアの東側は、沢山の工房が並んでいる。そこら中でさまざまな楽器がたくさん作られて、そして国中の人たちの手に渡る。オルゴア王国で一番の楽器が生まれる場所とも言われている。

 ラッパの形をしたえんとつからはもくもくと煙が上がり、いつもならそこかしこから金属を叩く音が聞こえてくるものである。しかし今は昼飯時。いくつかの工房は休み時間を迎えていて、男たち外に出て談笑をしたり、通りは工房の人たちで賑やかになっていた。

 そんな中、男たちの間をほんとうの風のようにかけていく子どもの姿があった。ゆらゆらと動く大きな帽子を押さえて、ポメは試験会場である学校へ向かって走る。

 外にいる人たちによってできている道は、まるでクモの巣のように複雑である。ポメはそれをらくらくと、まるで楽しんでいるかのようにすり抜けて足を止めることはなかった。

「チョーシにのってると、そのうちケガするぞ?」などとやじを飛ばしてくるフォルの方はと言えば、ポメの辺りをふわふわ浮かびながらどんどん色んな人たちにぶつかっている。そしてぶつかった人は何も気づかず、フォルは何人もの人たちの体をすりぬけていった。

 工房の景色が終わると、ポメは徐に足を止めた。目の前には、人だかりの壁ができていたのである。

「うわぁ、今日はいちだんとすごいや」

 ここはいつもは何もない広場であるが、今は簡易な骨組みや布で作られた露店がずらりと並んでいる。ここはいつも祭りどきになると多くの商人が露店を開く市場と化すのだ。

 新鮮なフルーツの香りが漂ってくるかと思えば、何やら大きな声でいくらだと値切りを始める人の声も聞こえてくる。

 市場と化しても、ここを通り抜けるのはポメくらいの子であれば簡単だ。だけども今日はとくに賑わいを見せていて、空でも飛ばない限りここを通るのはムリだろう。

「こういうときは、急がばなんとやら、だロ?」

「へへ、そうだったね」

 ポメは市場をまっすぐ行かず、左の方へ向かって走っていった。そっちは目的地の学校とは方向が大きく外れている。市場を横目に進んでいくと、小さな路地に入っていった。

 路地に入ると、あんなに騒がしかったのがとんと人の気配すらなくなっていた。そしてほどなくして、路地を抜ける。その先には、大きな通りが待っていた。

 左右に立ち並ぶのは、専属の有名音楽団がいる高級レストラン、ぴかぴかのフルートが並んでいる楽器店、いかにも高級そうなお店ばかりだ。少し路地を進むだけで、市場とは大きく違った賑わいのある場所があるのだった。

 この大きな通りを真っ直ぐ進むと、このアルメリシアの中心へと辿り着く。そこからはまた四方に大通りが伸びていて、そのうちの一つがポメの通う学校へと続く道にもなっていた。

「やっぱオレにゃあこういう、シャレたとこの方が性にあってるゼ」

「それじゃあ話し方も、もっと上品にしなくちゃ」

「ケッお前が物覚え良けりゃあ、オレも口うるさくしなくて済むんだヨ!」

 はいはいと、ポメは怒るフォルをなだめ、町の中心へ向かってかけだした。

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