第四十五章『試験場の竜と人』



私は貴女の敵です

貴女は私の敵です

では次に会ったときはどうだろう

そして次に会うための今はどうだろう


配点(一期一会)



--------------------


 天竜が出場する。その展開に、スリーサーズは迷わなかった。

 “湖の精霊”だ。彼らの内、近くにいた者へと声を掛ける。給水の木管ボトルを束で運んでいる従士に手を上げ、


「――チャンスですよ」


「あ、Jud.! そう伝えておきます!」


 それでいい。これは機会だ。何しろ今、彼らはベディヴィアを退けた。ファースト派の英雄達ではなく、大多数を占める戦士団に対し、サード派の戦士団で勝利した。

 ケイの介入もあり、決着はついていない。だが、


 ……ランスロウの件もありますからね。


 個人の相対ではない。弱いと思われているサード派の戦士団を有用出来るならば、このブリタニアの戦力としても充分な考慮に値する。

 もしも自分の妹や側近達が彼らを無視しようとしても、それこそが”恐れ”だ。怖じ気づいたのかと、そういうイメージはファースト派にとって最も避けたいものだろう。

 そして今ここで、天竜が来た。

 個人戦力としての最強はベディビアと言われているが、ペリノア王もまた、どれほどの実力があるのかは定かではない。何しろ気まぐれな竜だ。人の姿をしているが、本性を発揮されたのを見た者はいないのだ。

 それをもし、ここで退けることが出来たならば、


「チャンスでしょう」


 “湖の精霊”達を、ファースト派は無視できなくなる。


 アデーレは、皆に給水の木管ボトルを配りながら、スリーサーズから言われた事をストレートに告げた。


「スリーサーズさんから言われました! チャンスです、って!」


 皆は、天竜相手に誰が出るかで相談していたようだ。副長がジャンケンの構えで絡めた指の間を覗き込んでいるのが些か不安になるが、それはそれとして、


「……チャンスって何よ一体」


「Jud.、ではここでホライゾンが言います。”チャンスって何よ一体”と。そうしたら皆様――、おっと喜美様速かった」


「何? つまりはアレ? 解りやすく言ってアーマゲドン?」


「ウヒョー! お早い案件!」


「でもチャンスって何? 正純が政治で蹂躙していいってこと?」


「天竜を倒して名を上げるチャンスと、そういうことかもしれませんの」


「うちの後輩というか御家族、……結構トンデモというか、無茶言うで御座るなあ」


「あら、やろうと思えばやれる筈ですわよ?」


「逆にここで撤退という、そういう話は?」


『まあ輸送艦は大体修復出来てるから、そういうのも有りだろうさ』


「い、いや、英国からの脱出はまだ出来ませんよね?」


 では、とホライゾンが手を上げた。彼女は一つ頷き、


「――つまりこういうことですね。まず天竜を倒した後でアーマゲドンを英国に起こし、それからソッコでバックれる。……話はまとまりました正純様。そのような塩梅で!」


「どんな塩梅だ一体……!」


「というかアーマゲドン起こしたら逃げる必要ありませんわよね」


 そういう問題でもないと思う。


 “湖の精霊”達が、いつもの議論に入ったのを、スリーサーズは確認した。

 ペリノア王に対し、軽く手を上げ、待つように指示。こちらとしても、広場の片付けや観衆達の整理があるし、それはファースト派も同じだろう。

 つまり時間がちょっと要る。その間に、皆が来た。控えの者達に広場の整備の指示を出した直後。先ほどまで広場に出場していた者達が、


「スリーサーズ様! ……勝てました! 私、私達……!」


「結果は引き分けですよ」


 でも、


「……皆さん、よくやって下さいました」


 わあ、と、皆が声を上げる。

 一方で、広場の向こう。対面となる東側では、ファースト戦士団達が額を合わせて、ベディヴィアを中心に何かを話し合っている。今回の模擬戦の流れと反省を、皆がホットな内に行っているのだろう。

 どちらも、これからまた強くなると、そう思っていると、


「この勝利、恐らくスリーサーズ殿の戦士団を一気に強くしたものと思えるものであるかと」


「……そうですね。指揮官と戦術があれば強力な敵にも勝てると、そんな自信が付きました」


 しかし、と自分は、今回の指揮を執ったペネトレイター装備の二人を見る。夫婦らしい彼女達は、見たところイベリアの出身だろうか。よくは解らないが“湖の精霊”はグローバルだと、そういうことなのだろう。


「──ともあれ、あのお二人、用兵の知識と判断が見事ですね。今回、戦士団とアーチャー隊、そして術式隊の三隊がいましたが、彼らの出来る事と出来ない事をちゃんと理解していたように思います」


「Tes.、……スリーサーズ殿の戦士団は、何分訓練不足。三日で教えられる事は限られている。だから集中訓練したのは──」


「盾の使用と、……それが出来ない者達には、正面への突撃と、方向転換しての突撃のみ。しかしこれを左右の二隊で行えば、左右への突撃と挟撃が叶う、と」


「一番活躍したのはアーチャー隊であろうかと。何しろ彼らは狩猟を行うため野山を走り、足腰が出来ているので。この部分については、ファースト側と比肩出来るもの。

 だから彼らを囮にして、戦車隊を誘導。更に射撃も任せたのであるな」


「パーシバル様も、戦闘を見て高揚すると、語りたがりになるようですね」


 いやまあ、と苦笑を漏らす彼に、自分も小さく笑う。

 この模擬戦は、大きな収穫となった。メイデイの残滓に相応しいと言えよう。

 今、相手は天竜を出して来たが、


「……さて、どのような方法で立ち向かうのでしょうね、彼らは」


 さて誰が出るか、という話だった。

 ミトツダイラとしては、自分も候補に入れた上で選出となる。


「有り難いことに、向こうはこちらをナメてますの。余程の事がない限り、天竜は人型のままでの勝負はしませんものね」


「加藤・段蔵殿のように、人型でこその力を発揮するタイプ……、ということは?」


「その可能性は低いのではないでしょうか。――何故なら、彼女は英国外部からの襲名者です。彼女を派遣した側として考えるならば、竜の姿での実力を示せない者を外部に送って、竜属の威が誇れるか、ということになります」


「確かに、プライドの高い存在ですものね……」


 だとすると油断がある。ならば、


「二代は出ない方が良さそうですわね」


「Jud.、拙者、倫敦でチョイとペナンタラ王に自己紹介した際、佐助殿達と走り回ってズガンやった話をしてしまったで御座るよ」


「――確か、匂いで察知されたのでしたね。では自分も、やめた方が良いでしょう。同様に第五特務と、東照宮代表も」


「いやいやいや、私は頭数入れなくていいですよ!」


 皆が真顔になった。その上で手を上げるなら、


「左近はどうですの?」


『石田の見送りに出た後で寝ておる。だが、このところの疲労が残っている可能性がある。万全ではなかろう』


 結論が早いが、保護者が言うならそうなのだろう。大体、鬼武丸が左近を急かさない、という時点で、やはりそれなりの根拠があるのだ。


 ……これまでかなりハードに仕事しましたものねえ。


 それが武蔵の方針とは言え、石田・三成の指示に従って三日三晩不夜城状態で動いたのは、皆、それなりにダメージとして残っている。

 そういう意味では、張り切った左近は別として、皆、ある程度はイーブン状態とも言えるが、


「私は除外しておいて」


「“不転百足”が未来過ぎるか」


「それもあるけど、義脚と義足、顎剣の召喚が心許ないわ。位相空間からの射出だけど、確実にこの情報世界としての影響を受けてるでしょうから」


「“双嬢”が呼び出せないのとは別で、確かに召喚系は一回そこらへんの調整をしておきたいところね……」


「特務クラス相手なら不転百足と義体の射出無しで対応出来るけど、あの天竜はどのくらいかしら」


「副長級と、普通はそう考えますわね。――小規模教導院ならば総長クラス、というのが真田で実際にあった訳ですし」


 ようし、と応じる声があった。王だ。


「何かいいアイデアありますの? 我が王」


「おお、そうだな。――おい、点蔵、行って来いよ」


「おおう? 自分に勝機ありと、そう見て貰えてるので御座るか?」


「いや? オメエが派手に負けた後、セージュンが政治的に勝利する流れで。オメエ、やられるの上手えから、天竜相手にもノーダメ行けるだろ?」


「どういう流れで御座るか!」


「というか点蔵君は前に英国で地味に死にかけた前科がありますから、アレがジンクスとして働いて今回も同じになる可能性ありますよ?」


「私の気が回らなかったせいなので何とも言い返せませんね……」


「い、いえ、記録を見る限り、御母様は気を回しすぎただけで悪くありませんよ!」


 複雑過ぎてよく解らん。そしてまた手が上がり、


「向こうが規格外の存在を出して来たので、こちらもカーチャン様やヨシコ様で迎撃というのは有りなのでしょうか」


「コラっ、こういうところで保護者を”利用”するものではないぞえ?」


「――おっと失敬。では保護者としてアドバイスは如何でしょうか」


 そうですわねえ、と母が顎に指を当てて言った。


「尻尾掴んで左右にビタンビタン叩きつければ、十秒くらいで勝てますわよ?」


「――凄いの来ちゃったよミトっつぁん。子供としてどーすんの?」


「お、親は一番身近な他人ですのよ!?」


「確かにヴェストファーレンで一度見たが、あれはまた別であろう……」


 参考というか、悪い見本ですわねえ、とミトツダイラは思った。だが、


「一つ、越えてしまってるだけですわね」


「一つ?」


「――勝つための算段が、一つ越えて、”勝つ”になってしまってますのよ、御母様の場合。だから――」


 こういうことだ。


「能力不明の天竜に対し、勝てる率の高い者は誰か。そして、――勝つために必要なものは何か。そういうことですわね」


 幾つかの期待が、無い訳ではない。

 ペリノア王は、素直に自分の心の動きを楽しむことにした。


 ……タダでさえ、狭いロンディニウムに収まってる訳ですからねえ!


 こういうアクティブな機会は、前に出て行くべきだ。それに


 ……ランスロウ君の言っていた”彼ら”のことも気になります。


 ロンディニウムで会ったのは、基本的に政治系や術式系だろう。一人、フィジカル派がいて、これが天竜皇の匂いがした上で、白竜達のことを話題にした。

 いずれ彼らを倒すのだと。

 面白い。今、若手の中でエース級となっている彼らに目を付けているのもなかなか”良い”のだが、倒すことを当然としている意気が良い。

 自分などは、どうなのであろうか。

 そして彼らは、一体、どういう存在なのだろうか。話し合いでは落ち着かない。正直、煽り合ってるのも面白いとなれば、敵対するしかなくなるのが常だ。

 ならばやはり、戦いの場において戦闘をするのが手っ取り早いと、そういうものだ。このあたり、ランスロウや他の面々に言うと、


「意味が解らん」


 となるのだが、いや、理論だってるじゃあないですか。

 戦いたいだけですよ。ええ。だが、


「――用意が出来たようですね」


 スリーサーズの声と共に、向かいの人波から声が上がった。歓声とも、驚きとも違う。


 ……期待の声ですね。


 そして人の群を割って、その姿が出てきた。

 人影。見知った者だ。何故なら、


「どうも。お久しぶりです」


「ロンディニウムで生意気な口を利いた術者……!」


 術者が来るとは、想定外。


 スリーサーズは、その姿を見た。

 白と赤の装備だ。

 大型のバインダースカートに、弓を持つ。しかしその両腕に、


「手甲……?」


「パワーアームであろう。軽量かつ高速、という仕立てのように見えるのであるが、あれは――」


 パーシバルが、一回首を傾げてから、こう言った。


「ローマに由来する、グラディエーターの装備であろうか」


「――直政君? 術者というか、巫女が出て大丈夫なんですか?」


 整備室の中も、相当に混雑している。一応、各作業用機械の近くと、中央の試験用フロアは開けているが、他は使用しなかった部品や装備。工具のケースやストレッチャーで埋まっている。

 これは早めにカタつけたいさねえ、と、直政は内心で思いつつ、椅子に浅く座って言う。


「今の所、現場組の中で、天竜相手に最も勝率が高くて、状態もいいのは浅間の娘だけだろうさ。対英装備も良い感じで間に合ってる」


「……勝率と、言いますと?」


「まあ現場を見ろと、そう言いたいが、一つは彼女の状態さ。――浅間の娘はこの三日間、土地の鎮護と鎮守を受け持っていたが、御陰で肉体労働系はほぼ行っていない。蓄積疲労が最も少ないメンバーに入るだろ?」


 体調は何よりも大事だ。その上で、


「巫女装備を浅間が取り寄せていたのが効いた。梅椿は流石に持ち込めてないが、こっちの対英装備との組み合わせは、面白い結果を呼ぶだろうさね」


 ネイメアとしては、姉妹の装備に興味があった。自分の対英装備はどのようなものかまだ知らされてないということもあり、ちょっとした嫉妬もある。


『豊、その装備、巫女装備の亜種ですの?』


 胴体部と下半身。バインダースカートは正に巫女装備だ。

 だが、上半身が違う。両腕は、下腕部に細身の手甲が着いている。それは肘から上腕側に、まるでブレードのようなものを突き出していて、


『それは――』


『巫女の装備の一つですよ。梅椿は現在、淺間神社と東照宮が武蔵防護用として登録しているので武蔵から離れた場所や、他国の土地で使えないんですけど、代わりとして……、というか。まあ巫女も歴史長いんで、いろいろなものがあるんです』


 そして、


『この手甲については、母さんから直政様――、ワア! 様つけて呼んじゃいました!』


『やめろ』


 あ、これ、本気でやめて欲しがってますの。ともあれ豊の方はテンションが一気にアガったらしく、


『母さんの方から、対英装備に改造を頼んで、まあ、して貰ったそうなんですね。で、それを今、借りている訳です。――グラディエーター装備ってことらしいですよ』


 言っている間に、豊が広場の中央に立つ。

 ペリノア王と向かい合うが、こっちに手を振ってくるのはやはりテンションだろう。

 そして彼女が、右の手を振った。すると豊が弓を振り回すように掲げて、


「やあやあ我こそは“湖の精霊”の下っ端代表が一人、浅間・豊! ここにあるは我が母より借り受けた長弓”張桜”。――この”張桜”、何と新製品で今だと大特価! し・か・も! 今より三十分以内に通販申し込みをして頂くと、淺間神社特製の超精密に術式符が印刷できるプリンターがついてきてしまうんです! 更に! 更にですね! 御友達用や観賞用にもう一本注文された方には、な・ん・と! 何と更にもう一本をサービス! ――如何ですか!」


「何処の通販ですか」


 あっ、通販番組あるんですのね、と思った瞬間。スリーサーズが無言で右の手を上げた。

 戦闘開始だ。


 最初に前に出たのはペリノア王だった。


 ……さて。


 先手必勝という訳では無い。

 長く遊びたいという思いが無い訳では無いが、それとは別で、やはり勝利がすぐ欲しい。

 このあたり、複雑なものだと自分でも思うが、まあそういうものだ。

 前に出て、手を伸ばせばそれで片がつく。距離にして半歩、いや違う、今は竜の身ではないのだ。だからあと十メートルほどで、


「――――」


 空から降ってきた矢が、こちらの五体を貫いた。


 いきなりだった。

 広場の中央で、ペリノア王が動かない。

 彼女を縫い止めているのは、七本の矢だ。それも速射用の短いものではなく、安定性と打撃力に優れた長矢。

 それを見ていた清正が、吐息混じりに言った。


「流石ですね……」


 何が起きたかは解るが、何をしたのかは推測しかない。だが、ある程度の見当をつけて、彼女が呟く。


「最初の商品説明の際、振り上げた動きで直上方向に射撃。今、それが落ちてきながら、掛けられていた術式で加速の後、――下にいた獲物を穿ったのです」


「……開始前に勝負仕掛けたのは反則じゃないか?」


「それは副会長が政治的に用いて下さいな?」


 あー……、と声を漏らしたのは浅間だ。

 そんな彼女に、ミトツダイラは問う。


「……どうしましたの? 今の、恐らくは智に由来する技ですわよね」


「いやまあ、その通りだと思うんですが……」


 曲射や放った矢の制御は、彼女の得意とするところだ。

 自分として何となく解るのは、


「梅椿が無い分、あの両腕のパワーアームで弓を高速に強く引き絞って発射。弦が跳ねるのを押さえて音を小さくし、……正に抜き手も見せぬ射撃ですわね」


「――ええ。それは解ります。でも、ええと、そうじゃなくてですね……」


 浅間が額に手を当て、言葉を作る。


「やれば十二本は一気に行けたのでは、とか、着撃した矢がちょっと傾いていて勿体ないとか、そんなことを思うんですけど、まあでも、豊の仕込みだと七本で丁度良いでしょうし、この状況であれだけ出来るのは流石はうちの子、とか思ってしまってですね……」


「よく解らん親馬鹿と馬鹿親ムーブになってますのよ?」


 だが自分は広場の方を見る。そこでは、ペリノア王を前に、浅間の娘が視線を外していない。じっと相手を見据え、弓を体の前に浅く立てている。


「いいわねえ。……弓持つと胸以外もカーチャンそっくりね」


「いやまあ、基本姿勢が大事ですから」


 と、動きが生まれた。

 ペリノア王だ。彼女が一息を吐き、顔を上げてこう言ったのだ。


「――手を抜きましたか」


 豊は、首を傾げた。正面、自分の衣服と大地に刺さった矢を引き抜き、捨てるペリノア王をまっすぐ見たまま、


「手を抜く? そんなこと、ありはしませんよ」


 だって、


「――商品紹介の途中ですよ? 母さんとお爺ちゃんが組み上げた通神帯通販! 孫が手を抜いたら駄目ってもんですよ。――で? 何かありました? 御注文ですか?」


 言葉を投げかける視線の先。ペリノア王が口の端を上げた。

 ああ、竜もああやって笑うんですね、と思った瞬間だ。


「では、私も手抜き無く」


 いきなり、”半分”を持って行かれた。


 点蔵が気付くと、いつの間にか豊の位置が変わっていた。


 ……おや?


 ペリノア王は動いていない。だが、豊の立っている場所が、先ほどから五メートルほど奥に、南方向にずれている。

 いつの間に、と思ったときだ。


「――え?」


 メアリが、不意に顔を上げた。何かに気付いたように、


「豊様の位置が――」


「あ、大丈夫です。自分からです」


 浅間は既に理解していたようだ。だが、


「……え?」


「……あら?」


 遅れて、疑問の声が生まれる。そして、


「智、今、豊の位置がズレたのは――」


「ええ、よく解りませんけど、豊が回避したんです。でも――」


 浅間の手元に、表示枠が一枚出ている。それは”警告”を知らせるもので、


「ちょっと間に合ってませんでしたね」


 直後。先ほど豊のいた位置に、それが生じた。

 光の爆発だ。小規模なその連続と連鎖は、硝子を割るような音を響かせ、


「――――」


 豊が軽くバランスを崩した瞬間。


「――手は抜きませんよ?」


 言葉と共に、何かが豊に直撃した。

 顔面。その高さで、不可視の力が彼女の頭部を吹き飛ばしたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます