第125話 老眼

「この絵すごく好きなの。見て」

娘にスマホを渡される。

「……何かしらこれ?」

老眼がすすんで全く分からない。


しかし、バカの一つ覚えのように

親指と人指し指を広げるデバネズミ。

小さければ大きくすればいいのだよ。

何度も親指と人指し指を動かす。


「……まさか、マジで、お母さん違う」

娘の驚きと笑い声に嫌な予感がして

手元をよぉく見るデバネズミ。

「……これシールなんだけど、ヾ(≧∀≦*)ノ〃」


スマホの画面ではなく、カバーに貼った

シールを大きくなぁれと必死だった。

もうここまで見えないと老眼鏡が欲しい。


「もやし、今日中に使わなくちゃ。

 バターで炒めよう、もやしさん出ておいで」


野菜室をあさるデバネズミ。

プチトマトじゃない、シメジでもない。

確かあったはずなのにもやし。

冷蔵庫の中をくまなく探すデバネズミ。


「……ミョウガ使うの忘れてた。あれ、

 豚肉賞味期限切れてる。何で?」

日付見間違えたのかしら?

老眼の犠牲の豚肉……ごめんなさい。

 

で、何探していたのかしら?

(ミョウガのせい。いやロウカ)


「……どうしてもやしが無いの?なぜ消えた?」

独り言で探すこと三分、諦めモードで

冷蔵庫を閉める。左手に違和感。


もやし持ってた。左手でしっかりと。

確かうどんを手にしたはずなのに。


を見間違えた。


老眼鏡が欲しいデバネズミ。


いや、たぶん目が悪いのではないのだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る