第61話 コウモリ

「お母さん見て!すごくかわいい」

 娘がスマホに写るコウモリを見せる。

「まだ赤ちゃんだね」

「五センチくらいだった。欲しい!」

 

 欲しい?なぜに?コウモリだよ。

 犬でも猫でもハムスターでもないよ。


「他人の家の壁にくっついてたの。

 友達はミイラみたい、キクラゲみたい

 って言ってた。欲しくて持って帰りたいって

 言ったら、菌があるからダメだって」


 そうだよ!野性の子は保菌者だよ。


 欲しいを連発する娘を脅かしてみる私。

「コウモリはね、血を吸うんだよ!」

 ドラキュラのイメージで浅はかなデバネズミ。


「この子はフルーツコウモリだよ」

「……?……?」


 娘よ、フルーツコウモリご存じ?

 めちゃくちゃ大きくなるのだよ。

 熱帯しか生息しない。日本でも暖かい所

 にしかいないコウモリだよ。


 この子はココウモリで、フルーツコウモリ

 はオオコウモリなの。


 早口言葉のようにまくし立てるデバネズミ。


 娘よ、独り暮らししたらペットにしなさい。

 コウモリはかわいいんだけど、好きだけど、

 あの格好ずっと見てるとね……クラッ。

 

 頭に血が上るデバネズミ。

 

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