第97手 作って遊ぶ世界

 しばらく室内での作業が続いていた為か、外に出ると太陽の光が懐かしく感じた。


「たれぞー、その辺に植わってる木なら何でもいいよな?」


 まあ、どの木でもいいだろう。この際軽犯罪程度じゃ、お咎めのない世の中になってしまったのだから、木の一本や二本で大問題になることは恐らく無いだろう。


「ラン、リン。頼む!」


「「おっけー!」」


 二人は、外に出て一番近くにあった立派な木に向かって同時に拳を叩き込んだ。凄まじい轟音と共に、根元から簡単に木は折れた。さすがのパワーだ。


「よし、たれぞー! じゃあ斬で先ずは盤から作ってくれ!」


 俺が盤を作るのか。


「お、おう!」


 緊張するな。これまで49×49だったのに、いきなり9×9のサイズにまでなるんだ。感覚がおかしくなりそうだ。


「これぐらいかな?」


 俺は、木を輪切りにした後に、それをさらに正方形っぽく淵を斬り落とした。なんかそれらしい板へと変貌したが何か違和感がある。


「お、たれぞー! いいんじゃねぇか!?」


 これでいいんだろうか? 盤にしてはあまりにも小さく感じてしまう。まるで、かまぼこ板の集合体だ。


「それでは駒も作りましょう。お願いしますわ。」


 斬を扱えるのは俺だけ。とりあえず40個、五角形を作ればいいんだろ?


 地道な作業を俺は1時間近くも繰り返した。途中、集中力が切れて、指を切ってしまうことがあった。


 しかし、ついに駒の形をした物も完成した。


「ふぅ、疲れたー。」


 あとは、駒に文字を刻むだけだ。俺は凝り固まった首や肩を回す。


「で、文字はどうやって書くよ?」


 俺は素朴な疑問をぶつけた。この時代、昔で言うところの『ペン』と言う物はかなり珍しくなっていた。基本的に全てパネルタッチの入力で済んでいたのだから。


「にゃ、まかせろ!」


 その時、突然近くにあった木の上から猫王にゃんおうが飛び出して来た。


「にゃにゃにゃ〜! オレの爪で文字を書くぞ!」


 爪研ぎもできて一石二鳥な訳か。ウキウキの猫王が作業へと加わった。

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