パンデミックは再び

第2波

 暫くしてお手洗いから美晴ちゃんが戻ってきた。

「二人きりで何話してたの?」

 わたしと義経と二人きりで座っているのを見て彼女が興味深そうに聞いてくる。

「特に何も話しておらん。」

 先程とは打って変わっていつもの彼に戻ってしまっている。特に何も話してないって嘘ばっかり。あれ程辛そうに話していたくせに、これで償えるならと言って死ぬ気満々だったくせに。


 すると障子が開いて裕太達3人が和室に入って来る。暫く何処かへ行っていたらしい。

 全員揃った所で美晴ちゃんがとんでもないことを言い始めた。

「確か山崎君達って明日美ちゃんの幼なじみですよね?なんで仲良くなったんですか?」

 なんてこと聞いてるのよ、彼らに聞いても素直に答えてくれる訳無いでしょうに。


「どうして仲良くなったとかどうでも良いだろ、そもそも俺は渋々幼なじみをやってるだけだし。」

渋々幼なじみやってるってあんたねぇ…。

「そもそも幼なじみって渋々でやれるものなんでしょうかねぇ?」

 美晴ちゃんの鋭いツッコミに裕太は一瞬引いたが不機嫌そうな口調で彼女に言い返した。

「渋々に決まってるだろ?そもそも俺は明日美なんて嫌いだし。」

 その言葉に後頭部を鋭い角材でバコンと殴られたような衝撃を感じる。

 あんたとわたし、仮にも幼なじみでしょ?そんな酷い言い方ってありなの?


「なんで仲良くなったのだろうね、忘れた。」

「「さあ何故だろうか?」」

 一翔と義経、季長が冷淡な口調で答える、そんな全て忘れましたみたいな感じで言わなくても良いじゃない?

 もう、なんでわたし以外の誰かが来たとたんにどいつもこいつも冷たくなったりツンツンしだす訳?

 少しは素直になってくれたっていいじゃない!?

 この時は流石のわたしも苛々を覚えた。

 すると美晴ちゃんが「お手洗い行ってくる」と言い残してさっさと用をたしに行ってしまう。


 5人きりになった途端だった。いきなり裕太がこっちに寄ってきて

「今の嘘だから。」

 と相変わらずの仏頂面で言ってきた。

「嘘って何が?」

 わたしが彼に聞き返すとその無愛想な仏頂面を少しだけ赤らめながら

「べ、別にお前の事、嫌いじゃないから。」

 と言った、一体何のことが訳が分からずにポカーンとしているがその意味が段々と分かってくる。


「あと明日美ちゃんと仲良くなった日、本当は忘れてなんかいないからね。」

「「本当はしっかりと覚えておるからな。」」

 裕太に続いて3人が打ち明ける。

 3人もまた相変わらず冷淡な口調だがどこか優しい気がしてわたしは思わず嬉しくなる。

「なんかちょっと安心したよ。」


 









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