第5話 夕日を背負って

「おーーわりましたーーー!!」


 夕焼けを背に、学生達を見送った後、コポはうんと背伸びをして叫んだ。


 朝から教会内を案内し、初めての説教をし、その後は宿舎の掃除を指揮して、野菜を収穫しに畑へ赴き……フル活動して、やりきった。


「すげーよお前。今日のMVPだな」

 キノコ頭を撫でてみると、コポは、くすぐったそうに身をよじった。

「説教、そんなに良かったなら、全学科参加にしてればよかったかもね」

 くるくると髪を束ね直しながら、ウィントが言う。

「いやあ、ほんとほんと。剣術科なんか『説教タイムです、椅子に座れますよ!』なんて言ってやったら、泣いて喜んだろうに。な?」

 ケヴィンが同意を求めると、アズウェルは、おかしそうに笑った。


 ケヴィンは何度か中庭の周りを通過していたのだが、フェイによる警護隊基本動作の指導は、1日通してほぼ休みなく続けられていた。


 フェイは、目を細め、事も無げに言う。

「学校を出た後、教会の警護隊に入るつもりなら、このくらいはできないとまずいですからね。彼らを中心に学校でも取り組んでもらえるよう、学長にお願いしておきました」

「うええ」


 ケヴィンは曖昧に苦笑いしたあと、ハースナーの方に向き直った。


「魔術科はどうだったんだよ?」

「ああ、優秀だったぞ。雨期の祈祷は初めてだったそうだが、きちんと魔法力も感じたし、何より、住民が喜んでいたな。若者が活躍するのは良いことだ」

「さしずめ、おっちゃんたちが喜んでたってところかね?」

 ケヴィンがつついてみると、ハースナーは咳払いをした。

「……子供も遊んでもらって楽しんでいたぞ。ふたりとも、将来は町で医魔術院を開きたいと言っていたからな。子供に好かれるのは良いことだ」

「ふうーん」


 ケヴィンはニヤついて頷いた後、ウィントに尋ねた。

「そっちは?」


「あー、ふたりともよく働いてくれたよ。帝王学科くんは、どんな貴族のお坊ちゃんかと思ったら、慈善事業に熱心な領主の一家らしくてね。段取り上手。領地は将来安泰って太鼓判押しといたよ」

「普通科くんは?」

「よく気がつく、利発な子だった。なんでそんなに気がきくのかって聞いてみたら、6人兄弟の一番上だってさ」

 ケヴィンは、へえ、と言って感心する。

「子沢山の長男を神学校へ……親御さんは学費の工面も大変だろうし、親孝行してもらいたいもんだね」




 一通り皆の話を聞き、ケヴィンは、ぱんと両手を合わせる。

「オッケー、みんなお疲れさん!」

 見下ろすと、コポは眠たそうに目をこすっている。


「疲れた?」

「はい」

「おんぶしていこうか?」

「結構です」

「きょうはもう書類届けなくていいからな」

「それはやりたくないだけでしょう」


 まだ突っ込む余力があると分かったところで、ひょいと体を持ち上げ、背負う。


「わ!」

「きょうはもう、お兄さんに任せなさい」

「いえ、そう言うわけには……」

「シスターに、コポの夕食だけ早めにとれるようにしてもらうからさ」

「……」


 首元に、規則正しい寝息が当たる。

 ケヴィンはクスリと笑い、修道士宿舎へ向かう。

 夕日はまもなく沈もうとしている。

 オレンジと紫の混ざった空を見上げながら、充実したこの1日を、神に感謝した。




<終>

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