第2話 なんだその配置は!?

 執務室に、重いノックが響く。

 入ってきたのはハースナー西大陸司教で、先に来ていた2人を含めて、幹部が出揃った。


「概要は電話で話した通りなんだけど、23日、どうかな」

 ケヴィンが切り出すと、ウィント東大陸司教が、小さく手を挙げた。


「その日は催事の準備で手一杯。余裕無し」

「……なるほど、催事か。じゃあ、普通科と帝王学科は決定ね」

「はあ? 何でそうなる?」

「おもしれーじゃん、貴族のおぼっちゃんと普通の少年が、汗水垂らしてバザーのお手伝い。格差があるからな、あそこは。いい機会だ」

「ふむ……まあ、面白いかはともかく、良い勉強にはなるかもね。人手として使えるなら、引き受けようか」

「はい、決定」

 書類に羽ペンを走らせ、判を押す。


「次、魔術科。ハースナー良い?」

 突然名指しされたハースナーは、目に見えてうろたえる。

「いや、魔術は女学生だろう。アズウェルの方が良いんじゃないか?」

「何だよ、40過ぎて恥じらってんじゃねえよ」

「そういうことではない。修道院ならシスターが多いわけで……」

 もごもごと言い淀んだところへ、畳み掛ける。


「今回は、実技として、あちこち祈祷をしてまわってもらいます。ハースナーみたく、フットワーク軽い方がいいだろ?」

「ううむ、そういうことか。たしかに、南西の雨期に向けて祈祷の件数が増える時期だな。良い機会か」

「はい決定」

 さらさら、ぽん。


「ということは、私は神学科かな?」

 アズウェル修道司教が訊くと、ケヴィンは、ニヤリと笑った。

「いっひっひー」

「?」

 この顔は、何かいたずらを考えているときである。

「今回の神学科は、コポにやってもらいまーす」

「え?」

「はあ?」

「何だと?」


 三者三様の反応を得て満足したケヴィンは、羽ペンを指揮棒のように空中で振りつつ、続ける。


「あいつ、いま12だろ。あと3年したら神学校に入るんだよ。だから、いまのうちに上級生と交流。アズウェルはうまいことサポートしてやってくれ」

 アズウェルは、困惑した表情で尋ねた。

「教えるのが実質11人になるんじゃないの」

「いやいや。準備全般と、修道士の仕事の説明までは、コポにやってもらうよ。教義とか組織とか、専門的なことだけ請け負ってくれれば」

「なるほど、そういうことなら。準備も手伝えることはやるから、遠慮しないよう彼に言っておいてくれるかな」

「はい決まりー」


 全てにサインと判を押し、書類の角をとんとんと揃える。

「お前は何もしないつもりか?」

 ウィントがじとりと睨むと、ケヴィンはへらへらと笑った。

「忘れたのかよ、去年の惨劇」


 去年、ケヴィンが大司教になって初めての神学校研修の時。

 張り切って学校を訪問したところ、女子学生を中心に校内が大混乱になり、聖大教会から警護隊が出動する騒ぎになったのだった。


「……そうだった、忘れてた。お前はすっこんでてくれ」

 ウィントが額に手を当てうつむくと、その横でアズウェルが苦笑いをした。


「まー、ハースナーとウィントはまるっとお任せするよ。大人数のコポと初挑戦のフェイは心配だから、俺は聖大教会内をウロウロしてるつもりなんで。なんかあれば」

 ケヴィンは、分けた書類を3人に手渡し、ついでのついでに、さりげなく残りの書類をラスター用のカゴに積んだ。

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