第2話 一緒に考えてよ!

 関所の魔法陣へ飛ぶべく、礼拝堂奥の階段を降りて行った。

 短剣をはめ、扉を開ける。さくっと唱えて、目指すは東大教会。

 

 ゴブレット教は、厳格に組織化されている。

 教王、その下に大司教の自分。

 さらにその下には、東西の大陸司教がいる。これは、大陸を半分に割って、それぞれをおさめる司教だ。

 そしてその下に位置するのが、当該案件の教区司教。

 東西それぞれ6教区ずつ+離島の7教区があり、一応名目上は横並びであるが、花形とそうでないところはある。

 花形の東4でやらかしたターベルは、やはり大馬鹿だ。




「おっすー」

 東大教会に着き、魔法陣の部屋から出ると、礼拝堂には、説教の準備をする神父がいた。

「大司教、こんにちは。どうなさったんですか?」

「ウィントに用があってさ」

「なるほど。きょうは1日執務室にいらっしゃると聞いてますので、直接行ってみてください」

「はい、ありがとー」

 ケヴィンが訪ねるウィントという男は、東大陸司教……つまり、ターベルの直属の上司である。


「こんこんこーん。失礼しますー」

 重厚な扉を開ける。

「ケヴィンか。ノックを口で言う奴なんか生まれて初めて見た」

 見た、と言いつつ、ウィントはこちらに一瞥もくれなかった。

「あはは、お褒めに預かりまして」


 やや当たりの強い彼は、42歳には見えないほどのしなやかな細身体型で、肩口まである亜麻色の髪は、バレッタでひとまとめにしている。


「用件は? ターベルのこと?」

「ご名答」

「顛末書を書いてるところだよ。帰れ。出来上がったら届けるから」

 顔を上げずとも、イライラは伝わってくる。

「いやあ、書いてる途中でもいいから見せてよ。こっちは、ただスキャンダルとしか聞いてなくて、なんも判断できねえんだわ」

 頭の後ろをがりがり掻くと、仕方なくといった感じで、手招きされた。




「ふーん。ほぼハニートラップみたいなもんか」

「それでもホイホイついていくのは、愚の骨頂だね」

「まあな」


 ターベルが女性問題に至ったのは、極めてよくある話だった。

 貴族との食事で酒を嗜み、良い感じのところで実娘を同席させ、そのままお持ち帰り……という。


「相手の貴族とやらは?」

「さして有力者なわけでもないし、政治的にどうこうという話でもないように思うんだけどなあ」

「なんだよ、ターベルのやつ。マジでスケベオヤジじゃねえか」

 相手の年齢が、22歳だった。


「30も年下の娘相手に人生棒に振るとはね……」

「あ、やっぱ棒に振る?」

「当たり前だろ」

「その棒に振るさじ加減、俺の役なんだけど。あーやだよー」

 ウィントは、一瞬口をへの字に曲げ、じとりと睨んだ。

「処分を決めるのが嫌だから来たの?」

「……あー、まー。うん」

「断る」

 秒速で断られたケヴィンは、情けなく縋る。

「頼むよー一緒に考えてよー。ほら俺、まだ大司教になって2年だし? 処分とか分かんないし?」

「知るか。それに、何にせよ俺に聞くのはだめだ、モロに内部取引になるだろうが。関係ないやつに当たれ。そうだ、ハースナーに聞けばいい」

 早口でまくし立てられ、ちぇ、とわざとらしく拗ねてみる。

「んじゃーまあいいや。とりあえず概要はわかったから、ハースナーのとこ行く。邪魔して悪かったな」

 ウィントは、無言のまま手を振った。

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