第4話 道草

「お疲れさん」

 油紙の包みを開け、男2人、丘の上で月見がてらのピクニック気分を楽しんでいる。

 ほうれん草とチーズのパイを貰って、結局道草を食っているのだが、ラスターも共謀なので、よしとして欲しい。


「異教徒が壇上に乗り込んできたらやべーなとか思ってたけど、案外静かだったな」

 ケヴィンがヘラヘラ笑うと、ラスターは大きくため息をついた。

「それはまあ、警察の方総動員で見ていただいてましたから、安心してましたけどね。それより、集会後の混乱の方が私は……」


 説教が終わり、軽く質問の受け答えをした後、いざケヴィンが帰ろうとしたとき――写真を撮りたいだのサインが欲しいだの赤ちゃんの頭を撫でてくれだの……要するに、もみくちゃ寸前の事態だったのだ。


「皆さん分別のある方で良かったですよ。あれでなりふり構わない厚顔な方ばかりだったら、大司教、髪の毛が無くなってたかもしれませんよ」

「あはは、そんなことあってたまるかよ」

 ぱくりと、大きな口でパイを頬張る。

「広場でだなんて大胆なことを言い始めたときは眩暈がしましたが、まあ、無事終わって良かったです」

「全部、神の思し召しだよ」




 空を見上げると、下弦の月が薄く鋭い光を放っていて、情緒があった。


「あんまりお馬さん達待たせてもかわいそうだし、そろそろ帰るか」

「はい」


 人の幸せの形はそれぞれだが、いまの自分は、人に恵まれ、場所に恵まれ、日々の糧にも困らないどころか、こんなふうにパイのお土産までもらえて……


 きょうのお祈りは、食べ物に関することにしようと決めた。


<終>

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