その3 痴的な悲報です
『知佳、無茶するなよ』
『大丈夫大丈夫、その代わり蒼生の鈴木先生以外との初夜権は貰ったわよ!』
『あっそれ待った!』
そんな反論が届かない位に赤い
翠さんのdb-1を追い抜いて、更に加速。
『魔力任せの大加速魔法、空撃波! 飛ばされたくなければ脇に逃げな!』
『その勝負、受けて立つわ!』
アラミス先輩が杖を両手に横把持し、構えたのが見えた。
『速度を上げて下さい。二人がぶつかる衝撃波が来る前に突っ切ります』
翠さんがそう言って速度を上げる。
『知佳は大丈夫なのか』
『あんなので知佳が参る訳は無いよ。知佳の本気を信じてやって』
俺はその言葉を信じるしか無い。
背後で強烈な衝撃音がした。
『知佳!』
『怪我は無いわ。でもダブルノックアウトというところね』
ほんの少しだけ安心。
安心ついでに疑問を感じた事を聞いてみる。
『ところで何故アラミス先輩と騎士団の連中がこんなところに来ているんだ?』
さっき翠さんが倒した一人は関野だった。
『まだわかりませんか、彼が誰なのか』
貫井先輩のそんな台詞。
思い当たる節が無い訳では無い。
でも確か。
『ダルタニャン先輩とあの悪い魔法使いの魔法紋は違うんだろ』
『ええ。子猫の本来の魔法紋と彼の魔法紋は違います。でも十五世紀の魔女狩りの中で傷ついた彼女が生み出したもう一人の彼女、いや彼の残す魔法紋は子猫とは別の魔法紋です』
そうか。
敵はダルタニャン先輩が生み出したもう一人のダルタニャン先輩なのか。
『ただ彼も彼女もどこか滅びを求めているような気がします。少なくとも私にはそう見えるのです。鈴木君を生み出し、いまのようにしたのもそんな彼女なり彼なりの意志のひとつかもしれません。自分達を倒せる存在を生み出す目的だったのかもしれません』
『その手段が『ラブ挿入!』というのも尊いですわ』
こら翠さん、それを思い出させないでくれ。
本当に悲しいお知らせだ。
『その『ラブ挿入!』って何ですか?』
和花ちゃん、それを聞かないでくれ!
お願いだから。
中学生の情操教育的にも問題ありありだしさ。
さて、正面に次の敵が見えた。
今度は一人だ。
『義理あってここを通すわけにはいかぬ! マッスル・バイオレント・マシンガン!!!』
なぬ!
『ウォーターウォール・セプタプル!』
目の前に水の壁が現れた。
咄嗟に俺達は左に避ける。
何重もの水の壁が衝撃波を和らげ消し去ったのが見えた。
翠さんが背後から魔法音声で叫ぶ。
『ここは左ぎりぎりを出来るだけ速く通過して。何とか防ぎます』
『ふむ、でも私ポルトスの
強敵だ。
『水魔法奥義、足場注意!』
俺達の後から翠さんのもう一つの魔法がポントス先輩に襲いかかった。
『何だこれしき、マッスル・バイオレント・スペシャー、あれえええええ』
ポントス先輩、盛大にすっ転ぶ。
『今のうちです!連続で足場に水魔法をかけて立てなくしています。その隙に早く!』
『またこんな感じかああっ!』
俺達はポントス先輩と翠さんを背後に残し、更に前へ。
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