第289話
「ここまでありがとうございました」
女性2人は地面でへばっていて、何も話すことが出来ないでいる。
それを良いことに、青年は案内代金として金貨5枚を支払ってくれた。
支払い金額は『払う側』が決める。
最低でも銀貨1枚と言う規則があるが、上限は決められていない。
だから、金貨5枚は破格だがそれ自体に違法性はない。
だから、くれると言うから貰っておく。
門には門兵と門番がいて、出入りの管理が正しく機能していた。
すでに慣れた手続きで済ませて町の中へ。
「誰が来てるかなー?」
「バティとジェシー。
うーん。『依頼処理』で必要な素材があるなら出せるけど」
〖 すでに、その旨は伝えてあります。
それを対価に部屋を確保しました 〗
「さすがハンドくん。
正当な取り引きなら問題にならないからね。
文句言う前に、自分も何か取り引きすれば良いだけだし。
ああ。ギルドが見えてきた」
〖 依頼書は受け付けに預けてあります 〗
「ありがとう。ハンドくん」
冒険者ギルドに近付くと、建物の周りには冒険者と冒険者に見えない人たちが
冒険者の中には、さくらたちを知っている者も多かったようで、中に入る邪魔をしようとした男たちを止めてくれた。
「あら。いらっしゃい」
「久しぶりです」
「ああ。元気そうだな」
「はい。おかげさまで」
バティとジェシーに軽く挨拶をして、受け付けに近寄る。
「ハンドさんから連絡を受けて、すぐ
その際、ハンドさんにこの建物の前まで送って頂きました」
「門番も門兵もいなくて驚いただろ」
「はい。それと、皆さんが町を出られた直後だったそうで。
ご連絡頂いたことのお礼をすぐに伝えられず、申し訳ございません」
「いや。すぐに動いてもらえて良かった。
ギルド長が罪を逃れようと『此処に自分を残せ』と訴えていたからな」
「はい。此処の管理をされていた警備隊の方からも伺いました。
その方にハンドさんが私たちの身を証言して下さり、ギルドの権利を明け渡してくださいました」
バティは「それで・・・」と言いながら10枚近くの書類を出してきた。
個人情報を漏洩した者たちの名前が20名ほど連なり、ギルド法に
〖 すでに全文確認済みです。
ついでに主人名義で署名もしてあります。
内容はあとで説明しますから、今は仕舞ってください。
早く終わらせないと門前に捨ててきた『女怪獣』が、鼻息荒くして襲って来ますよ 〗
「それは困る」
〖 という訳で、さっそく依頼書を出してもらえますか? 〗
「はい。此方です」
「・・・アレ?
横領された依頼書がない」
〖 あれは急ぎでしたから、先に処理しています。
私たちはコレです 〗
「私の担当はこの山ですね。
ルーナたちはこれでしょう」
「ああ、はい。
これなら私たちから出せます。
・・・他に依頼はありませんか?」
「売りたい物がございましたら仰ってください」
シーナはキバやツノをメインにあげていく。
「それらでしたら、ユリティアで依頼が多く出ていました。
問い合わせますので少々お待ちください」
「はい。お願いします」
「では、いま出せる依頼品を先に提出しましょう。
先にご主人からどうぞ」
さくらはレア物をメインに提出していく。
「はい。すべて確認しました。
金貨380枚。銀貨920枚。銅貨1,350枚となります」
「はい。ハンドくん。確認お願い」
出された3つの革袋。
それをハンドくんは自分のアイテムボックスに入れて、何枚増えたかを確認していく。
〖 金貨8枚。銀貨11枚。銅貨23枚が多く入っていました 〗
そう言って、ハンドくんが余剰金を返却する。
「あら?・・・すみません。確認します」
〖 これではないですか?『依頼手続き代』。
緊急依頼で金貨1枚取っています 〗
「え?!あ!本当です。
これは前任者が受け付けましたが、私が手続きをしたものです」
〖 横領・・・ですね。
この町は比較的『若い町』のため、最初にこの紙を見せられたら信じてしまうでしょう。
それにこの依頼申請書は冒険者に見られません。
掲示板に貼られるのは依頼品と必要数、依頼期限と成功報酬を記載した依頼書です。
だからこそ、これまでバレずにいた訳ですね 〗
「じゃあさ。あのギルド長が『残る』と言い張ったのも、『他の町のギルドから職員が来たら横領がバレる』から、その証拠隠滅のため?」
〖 その可能性は高いですね 〗
バティの表情は変わらないものの、漏れ出すオーラが・・・
「バティ。やっつけたい気持ちは分かるけど、先に仕事を済ませて。
ちょっと警備隊を呼んでくるわ」
「ええ。すみません。失礼しました。
返金、ありがとうございます。
それと不正に気付いてくださり、ありがとうございます」
バティは深々と頭を下げてお礼を言うと、次に待つスゥの依頼を受け付けた。
こちらも『依頼手続き代』が含まれていたため正しい金額が支払われた。
ポンッという音がしてハンドくんが現れると、バサリと音と共に大量の紙が背後の事務机に乗せられた。
「あれ何?」
〖 ユリティアで滞納している依頼書です。
私たちが受けられる物を運ばせました 〗
「あれすべて片付く?」
〖 今から分類します。
先にそちらの依頼処理をお願いします 〗
「はい。お手数をおかけします」
〖 部屋を借りましたからね。
その礼だと思って貰えばいいです 〗
「それに、彼女たちのアイテムボックス内を整頓するためだからね」
「本当に、何から何までありがとうございます」
バティはお礼を言うと、シーナが提出した素材を確認し始めた。
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