第197話



「何故、さくら様は『怒気に弱くなった』のでしょう」


創造神はジタンを見る。

ヨルクとヒナリはジタンの言葉の意味が分からない。

ドリトスはそんな2人に「さくらは『天罰騒動』の時に『その場におった』んじゃよ」と説明する。

あの時に放たれた『創造神の怒気』は、大陸中の『生きとし生けるもの』に影響を与えた。


それに『さくらも巻き込まれた』のだ。


あの時、『神がすぐに回復してくれた』と話していたが・・・


「ドリトス様。セルヴァン様。皆さんが『聖なる乙女方の来訪』の時に放っていた怒気は、『あの時』より強かったのでしょうか?」


2人は『その場にいた』ため、比べられるだろう。

顔を見合わせたセルヴァンとドリトスだったが、「『天罰騒動』の方が強かった」と答える。

彼らの会話に、創造神は『ジタンの疑問』が分かった。



「キミたちは『たましい』がどうなっているか知っているか?」


「いえ・・・。『私たちの意識』が『たましい』だと思うのですが」



ヒナリの言葉にドリトスたちも頷く。

ひとり、ヨルクだけが『なにか』を考えている。


「ヒナリ。それでは創造神が聞いた『どうなっているのか』の答えになってない」


「え?あ!すみません・・・」


ヨルクの指摘にヒナリが気付き、慌てて頭を下げる。

「フム・・・」と考えだすドリトスと、「うーむ」と悩みだすセルヴァン。


「じゃあ分かりやすく説明をしよう」


創造神はそう言って、手のひらの上に『透明の球体』を浮かべる。

その球体の周りには『水の膜』が覆われていた。


「キミたちの『たましい』は、本来こうなっている」


たましいの周りには『バリア』があって、『外敵』から守られているということですか」


「そう。それはさくらも乙女たちも同じだ」


「でも、さくらは・・・」


「ええ。話では『弱い怒気』でもさくら様は苦しまれたと」


「それは、長い間『熱を出していた』からだ」


創造神が球体が纏う膜に触れると、膜が消滅した。

それを見たヨルクが「そうか!」と目を見開く。


「さくらは熱を出して『身体が弱っていた』。それは『たましいが剥き出しの状態』と同じだったってことか!」


「当たりだ」



バリアで、様々な攻撃からたましいを守っていたのが、身体が弱ったためバリアが張れなくなった。

その状態で攻撃を受ければ、直接たましいにキズがつく。

『怒気騒動』は『それが原因』だったのだ。


「創造神様。『今のさくら様』は『バリアが回復した状態』なのでしょうか?」


ジタンの質問に創造神は黙って首を振った・・・横に。

そして球体に、オブラートに似た『極々薄い膜』を張る。

しかし、その『オブラート』には大小の穴がいくつもき、とても『球体を守れる状態』ではない。

これが『今のさくら』なのか。


「良かった・・・」


誰もがショックを受けている中、ヒナリは安堵の表情を浮かべる。


「おい。ヒナリ・・・」


「だって『何もなくなった』状態から、『少しは回復した』のでしょう?」


ヨルクに笑顔を向けるヒナリは、そのまま創造神を見る。


「時間がかかっても『元に戻る』のですね」


ヒナリには『確信』があるようだ。

創造神は「時間はかかるが」と首肯する。

「ね?」とヒナリがヨルクを、そして皆を見る。


「まずは『穴が完全に塞がって』、それから『バリアが厚くなる』でしょ?」


「それでしたら『さくら様のたましいを守る魔法』を考えましょう」


「俺とドリトスで、それを『セイジュのブレスレット』か、何か『身につけて外さないもの』に付与する方法を考えよう」


「さくらがいつもしてる『金の指輪』はどうだ?」


ヨルクがそう言いながら創造神を見る。

さくらはいつも右手中指に指輪をめている。

あれは『元の世界』にいた時から身につけていたものだ。

『右手中指』に、特に意味は無い。

もらった指輪の大きさが『中指』のサイズだったのと、『生活で邪魔にならない手』が右手だっただけだ。


「あれには何も付与していない。キミたちの準備が出来次第、『別荘島』で再会出来るようにしよう」


「その時はお願いします」



さくらと再会出来たら・・・いっぱい抱きしめよう。

そして、今度は『笑顔』で送り出してあげよう。



ヒナリは、そう遠くない『再会の日』を思い笑顔を浮かべた。

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