第194話



「さくらの世界に生きる『肉食動物』は、すべて『あんなふう』なのかね?」


〖 いいえ。『同種』であっても『兄弟』であっても『我が子』でも、『オス』ならば『敵』と見做みなし、『群れ』を作らない種族もいます 〗


「確かに。『オオカミ』の群れは『雌雄は同数』だ」

「しかし『ライオン』の場合、メスや幼体が合わせて15頭に対してオスは『単体から3頭』」

「幼体でも『オス』なら、3年以内に群れから追い出され・・・次に会ったときは『敵同士』だ」


創造神は『さくらの世界』に住む生物を思い返して口にする。

その言葉にヨルクは創造神から食事中の恐竜たちへと視線を戻す。


「しかし・・・彼処あそこにいるのって『オス』も半数はいるよな」


「そうじゃな。・・・しかし『さくらの優しい心』を受け継いでおるのではないのかね?」

「そう考えれば、あの『ティラノ』が『弱者よわきものに優しい』のも『納得』出来るじゃろう?」


「ってーことは、『他の恐竜れんちゅう』も『優しい』ってことか」


〖 みなさん。あまりにも驚くことが続いたので、『数時間前』のことをすっかり『お忘れ』なのかも知れませんが・・・ 〗


ハンドくんの『通常ではない』声音こわねに、全員の視線がそちらへ向けられる。


〖 一体『どこの世界』に、従順に『お手やおすわり』をする『凶暴な肉食動物たち』がいるのですか? 〗


若干どころか、思いっきり呆れたような声と『バカにした』ような口調のハンドくんからの指摘に、その場にいた全員が「あっ・・・」と声をあげた。

そうなのだ。図鑑から現れた『ティラノ』に、目を輝かせたさくらが真っ先にしたのは「お手」と言って手のひらを伸ばすことだ。

それに対して、『ティラノ』は長く鋭いツメを『ちょんっ』とさくらの手のひらに乗せたのだ。

それも、キズつけないように細心の注意をして。

続けて言われた「おすわり」も、ちゃんと『尻尾』で身体を支えながら腰を下ろしていた。

さらに、念願だった『お手とおすわり』をティラノにしてもらえて、「わ〜い!」と無邪気にとびついたさくらに対して『硬い表皮で傷つかないよう』に気を使っていたのだ。

ハンドくんの言う通り、どこの世界に『いつくしみ』を見せる肉食動物がいるのか・・・



ちなみに、さくらが欲しがったのは『最新の図鑑』ではなく『古い恐竜図鑑』だ。

そのため『ティラノ』は『獲物を追いかけるタイプ』で『脚力』が強い。

他の恐竜たちも同様だ。

それは、さくらが大好きだった『恐竜館施設』が『旧式』だったからだ。

そのため『研究結果』で姿が変わった恐竜たちも、『存在自体を否定』された恐竜たちも、ここでは『昔の姿のまま』だ。

恐竜島ここは『さくらのための場所』であって、『研究成果』など関係ないのだ。





[ さくらは? ]


[ ぼくらの『ご主人さま』は? ]


[ 一緒じゃないの? ]


[ どこに『隠した』の? ]



『恐竜島』へと繋がる入り口に立っていたため、『食事』を終えた肉食恐竜たちがドリトスたちに気が付いて寄ってきた。

しかし、そこに『さくら』がいないため口々に尋ねるが、ドリトスたち『エルハイゼン組』には『鳴き声』にしか聞こえない。



[ ねえ。さくらはどこ? ]


[ 『ごはん』終わったよ? ]


[ 一緒に遊びたい ]


〖 はい!そこまで! 〗



ハンドくんの声に、恐竜たちは大人しくなる。

〖 さくらは遊び疲れて眠っている 〗と教えられて、恐竜たちは残念そうにショボンとする。

尻尾もダラリと下ろしてしまっている。



〖 みんなに『大事な話』があります 〗

〖 草食恐竜たちにも聞いてもらいたいので、恐竜島へ戻りますよ 〗





恐竜島に移動して草食恐竜たちと合流する。

内海の恐竜たちも一緒に話を聞くため、さくらとヒナリ以外全員が海岸に集まる。

恐竜たちは、『ハンドくんの『大事な話』が何なのか』興味津々だった。



〖 キミたちの『言葉』は、彼らには『鳴き声』にしか聞こえていない 〗


ハンドくんが恐竜たちに向けて『事実』を伝えると、恐竜たちは驚きの『声』をあげる。



[ なぜ? ]


[ それは『ご主人さま』にも? ]


[ どうやったら『おはなし』できる? ]



「君たちと『さくら』たちとは『声の出し方』が違う」

「『喉のつくり』と言うべきか」

「君たちの場合、『声を出す』のではなく『鳴く』ように出来ている」



恐竜たちに創造神が『説明』する。

彼らは『自分たちはみんなの言葉が分かる』から、さくらたちも『自分たちの言葉が分かってる』と思っていたようだ。

さくらの場合は、『ハンドくんの通訳チャット』があるから『会話』が成り立っていたのだ。

それを知って、恐竜たちはシュンと落ち込む。

そんな彼らにハンドくんは『希望』を口にする。



〖 しかし『魔法』を覚えれば、このように『意思疎通』が出来る 〗


「・・・それはハンドくんが『召喚生物』だからだろ?」


〖 それは『彼ら』もおんなじです 〗

〖 彼らは媒体が『図鑑』だっただけです 〗


「ハンドくんたちは何だ?」


〖 イメージは『映画』です 〗


「ハンドくんの場合、さくらが『初めて使った魔法』なので『規格外』なのはいなめません」

「ですが、ハンドくんが取得した『簡単な魔法』でしたら、練習すれば『共有』が可能です」

「そして、ハンドくんたちをはじめ、さくらが『んだ彼ら全員』には『さくらの世界』の空気などの影響は一切ありません」



ハンドくんの言葉を補足するように、アリスティアラが説明する。


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