第182話
ガツン!という音と共に、左腕に衝撃が走った。
振り向くと、驚いた表情の男がナイフを持って立っていた。
後ろの路地から現れた男に『左腕を狙って斬られた』のだ。
しかし私が『斬られた』衝撃ではない。
ハンドくんが『鋼鉄のハリセン』で庇ってくれたのだが、さくらとの距離が近かった。
ナイフからさくらを庇ったその反動で、ハンドくんが左腕にぶつかったのだ。
「ハンドくん!!!」
〖 すみません。ぶつかってしまいました 〗
〖 ケガはありませんか? 〗
「ない!ハンドくんは!」
〖 何ともありません 〗
〖 もう大丈夫ですよ。落ち着いてください 〗
ハンドくんはハリセンをしまって、いつものように優しく頭を撫でてくれる。
その手を慌てて掴んで鑑定魔法越しに見るが、ハンドくんの
状態にも変化はない。
「・・・・・・よかった」
さくらはハンドくんを胸に強く抱きしめてその場に座り込む。
襲って来た男は、他のハンドくんたちが取り押さえて、取り上げたナイフで男の口を切って魔法が紡げないようにしてからアキレス腱を切って逃げられないようにして、ナイフを右手の上から地面に深く突き刺した。
しかしそんなことは『いまのさくら』にはどうでも良かった。
安心から流れる涙が止まらない。
〖 帰りましょう 〗
「うん」
さくらが返事をすると、そのままハンドくんが無詠唱で『別荘』へ
『別荘』に帰っても、さくらは泣きじゃくって泣きやまない。
ハンドくんはまださくらが強く抱きしめていた。
そのため、副族長の『左手のハンドくん』がさくらの頭を撫でて慰めている。
他のハンドくんたちも、さくらの背中を撫でたり肩をポンポンと叩いたりして慰める。
〖 さくらは私達が『
ハンドくんの言葉にさくらは首を左右に振る。
「知ってる・・・でも『イタイ』のはヤダよぉ・・・ハンドくんが、『キズつく』の、なんて、見たくない、よぉ・・・」
泣きじゃくるさくらは、腕の中のハンドくんをその身で守ろうとするように身体を折り曲げて小さくなる。
〖 大丈夫ですよ 〗
〖 『そうならないため』に『防御』魔法を最大限までレベルアップしたのですから 〗
「・・・・・・死んじゃったり、しない?」
〖 死にませんよ 〗
「・・・ケガ、しない?」
〖 しませんよ 〗
「これからも・・・ずっと『一緒』にいてくれる?」
〖 もちろんです 〗
〖 私たちは『これからも一緒』です 〗
〖 貴女を絶対独りにはしません 〗
「・・・うん。・・・・・・『約束』だよ」
〖 はい 〗
「破っちゃ・・・ヤダよ」
〖 はい 〗
ハンドくんと『約束』したことで、さくらの感情が落ち着いていく。
手のチカラが弱まるとハンドくんはそっと抜け出して、さくらの頬を優しく撫でる。
さくらは嬉しそうに微笑み、目を閉じる。
ハンドくんが治癒魔法で、泣いて腫れた顔や赤くなった目を回復させていく。
〖 さくら 〗
ハンドくんに呼ばれて目を開けると、目の前にプリンが用意されていた。
「あ〜」
さくらが甘えるようにクチを開けると、ハンドくんがひと口掬ってさくらのクチに入れる。
さくらは嬉しそうに笑うと、再びクチを開ける。
最後のひと口までハンドくんに食べさせてもらうと『ヒナルク』の姿になった。
「そろそろ『冒険旅行の続き』に戻ろ?」
『はい』
さくらはハンドくんの魔法で『エンテュース』に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。