第113話



神々皆様が此処にいらっしゃられる時は、私たちもご一緒しても宜しいのでしょうか」


「もちろん。さくらの願いは『みんな一緒に』だ。誰が欠けてもさくらを悲しませるだけだ」


ヒナリの言葉に創造神は『当たり前』という表情でさくらの頬を撫でる。

仰向けで寝ているさくらは創造神の手を掴んで微笑むと『はむはむ』と母指球ぼしきゅうを甘噛みする。

ヒナリたちは慌てるが創造神を含めた神々は笑っている。


「分かった。分かった」


創造神は笑いながら空いている手でさくらの頭を撫でる。


「おやつの時にでも貰いなさい」


「あら。今日は何でした?」


「『ソフトクリーム』だったよ」


『『味』は?』


「ストロベリー」


「あらまぁ。この子が好きなのは別の味じゃなかった?」


「のど飴の味が記憶に残ってたのかしら」


『複数の味が食べられるようにした方が良いですね。すぐに機械を揃えます』


「ああ。頼むよ」



さくらの『甘噛み』は水の女神が「そんなのクチにしても美味しくないしおなかを壊すわよ」と言って創造神の手を外させて終わらせた。


固まるヨルクたちに「寝ぼけて『食べている』のよ」「創造神様に『食べたいもののリクエスト』をしているの」と女神たちはクスクス笑う。

創造神は自身の長い指を握るさくらに「『その時』は一緒にやりたいな」と笑う。


「また何か『催促』ですか?」


「ああ。『粉ものパーティー』をしたいらしい」


「あら。それは私たちも一緒に楽しみたいですわね」


『それでは『ちゃっちゃ』と残ってる『厄介ごと』や『後始末』を片付けてきてください』

『さくらの『リクエスト』は3日以内に叶えますから』


「制限3日か?」


『日付が変わったから残り2日』


「おいおい」


『正確には2日と10時間58分』


どうやらハンドくんは『明後日の昼に粉ものパーティーをする』つもりのようだ。

創造神とハンドくんのやりとりに女神たちは「あら。それじゃあ間に合うように急がなきゃ」と苦笑する。

どうやら『この世界の主導権』は神々ではなくハンドくんにあるようだ。




「・・・『粉ものパーティー』ってなんだ?」


「ああ。『さくらの世界』で『小麦粉』という粉を使って作る『お好み焼き』や『たこ焼き』などの料理がある。それをみんなで作って食べるパーティーのことだ」


ヨルクの疑問に創造神が答える。


「『お好み焼き』は以前さくらが作ってくれたわね」


「え?さくらは料理が出来るのですか?」


「あら。知らなかったの?ハンドくんが作る料理やお菓子は元々さくらが作ってたのよ」


自分じぶんたちはさくらの魔法まほうからまれましたから』

『そのため、さくらの記憶きおく知識ちしきもすべてっています』

『そのなかに『料理りょうりの知識』もあります』

『さくらは和食わしょく洋食ようしょく和菓子わがし洋菓子ようがし色々いろいろつくれますよ』


女神やハンドくんの言葉に驚くヒナリ。

確かにさくらは何冊も『料理本』を持っている。

持っているということは『作れる』ということだ。

ヒナリたちはそう納得した。




それはまったくの誤解である。


さすがにカレーやシチュー、チャーハンなどの簡単な料理、作りなれた料理やお菓子ならレシピがなくても作れる。

でもそれ以外は『料理本を見ながら』、箱などの裏に書いてある『作り方を見ながら』作っているだけだ。




「今度作ってもらうといい。さくらの料理は美味いぞ」



・・・本人ひとが寝ている間に、勝手にハードルをあげないでほしい。




創造神がタオルケットごとさくらを片手で抱き上げて立ち上がる。


「さあ。キミたちも休みなさい」


「あっあの!3日後の『粉ものパーティー』。皆様と一緒に出来るのを楽しみにしています!」


そう言ってヒナリは頭を下げる。

創造神はそんなヒナリの頭を撫でてヨルクにさくらを託す。

ヨルクの腕の中で身体をねじって暴れるさくら。

創造神から託されたときに思わず『創造神への嫉妬』と『奪われたくない』という思いから強く抱きしめてしまったのだ。

ドリトスが横から手を出して落ちかけたさくらを抱き上げる。

途端に大人しくなるさくら。

その様子を笑ってみていた創造神は、さくらの頭を撫でて「さくらのことを頼んだよ」と言って残っていた女神たちと一緒に去っていった。


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